もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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漫画

マポロ3号『PPPPPP』 誰も読んだことがなかった、鮮烈な視覚的ピアノ漫画

『対世界用魔法少女つばめ』連載中のマポロ3号のデビュー作 マポロ3号の新連載が、ついにジャンプ+で始まった。タイトルは『対世界用魔法少女つばめ』。 shonenjumpplus.com 「まどマギ」を思わせる終末型の魔法少女もの、という定番モチーフの漫画だが、そ…

九井諒子『ダンジョン飯』 「肉」として喰らい喰らわれる、剥き出しの世界

モンスターを喰らうことによる、肉体の存在感 ※ネタバレあります 今でも残念に思っているのだが、九井諒子『ダンジョン飯』の第一話を読んだ時、私はその魅力、あるいは恐ろしさに気が付かなかった。「ああ、なんかファンタジーあるあるコメディね」というだ…

永野護『ファイブスター物語』は完結するのか問題 & そのジェンダー表象について

最近の『ファイブスター物語』を読んで考えたこと ファイブスター物語 17 (ニュータイプ100%コミックス) 作者:永野 護 KADOKAWA Amazon このほど永野護『ファイブスター物語』の第17巻が発売された。私も長年の読者なのでさっそく買い、数時間かけて読み、過…

『ゴールデンカムイ』 透明な国家と機械化した二階堂浩平

『ゴールデンカムイ』に描かれなかったもの 以前私は下記の記事で、野田サトル『ゴールデンカムイ』には「世界の全体」が描いてある、と書いた。それは「例えば「愛」と「欲望」と「暴力/権力」と「生命」と「歴史」とか」の、世界を構成する諸要素が、物語…

『チェンソーマン』 デンジの欲望はどこへ行ったのか

性欲と大量死 チェンソーマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:藤本タツキ 集英社 Amazon 藤本タツキ『チェンソーマン』について、あの漫画は一体なんだったんだろう、とたまにぼんやり思い出す。 私にとって、この漫画の内容は、乱暴に言えば以下のよう…

ネトフリドラマ化原作、ニール・ゲイマン『サンドマン』を読んでみたら最高の現代ファンタジーだった

ニール・ゲイマンとは? ニール・ゲイマンという作家は英米と日本で知名度にかなり差のある作家だと思う。日本ではまだそんなに知られていない気がするが、英米では絶大な評価と人気を持っている作家という感じだ。SF・ファンタジーの分野から出発しつつ、現…

鬼舞辻無惨は都市を体現する。『鬼滅の刃』における他者としての個人主義

雑踏の中で現れた鬼 ※終盤のネタバレがあります。 私は吾峠呼世晴『鬼滅の刃』のそんなに熱心な読者ではなかったのだが、好きなキャラクターは鬼舞辻無惨だ。 鬼滅の刃 2 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:吾峠呼世晴 集英社 Amazon まず登場シーンが良かっ…

近藤信輔『忍者と極道』が暗示する私たちの見えない戦争

笑いのリアリティとモラル 忍者と極道(1) (コミックDAYSコミックス) 作者:近藤信輔 講談社 Amazon 近藤信輔『忍者と極道』(コミックDAYSコミックス)は例えば喋る生首や面白いフリガナで有名で、実際にすごく笑えるんだけど、同時にシリアスな漫画で…

『超人X』『東京喰種』 石田スイが描く生命の不可逆的な変化

石田スイは肉体の変形を描く 『東京喰種』の石田スイの新作、『超人X』(ヤングジャンプコミックス)が1・2巻同時発売したのでさっそく買った。 超人X 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) 作者:石田スイ 集英社 Amazon 超人X 2 (ヤングジャンプコミックスD…

『呪術廻戦0』再読 「里香ちゃん」はなぜすでに死んでいるのか、あるいは少年バトル漫画の原罪

呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:芥見下々 集英社 Amazon 呪術廻戦の新しさは語りづらい 映画公開をきっかけに芥見下々『呪術廻戦』第0巻を再読してみた。 この漫画の新しさというのはけっこう説明がしづらくて、少…

『ゴールデンカムイ』には「世界の全体」と、「映画のファンタスム」が描いてある。

「全部ある漫画」 別にこんなところで紹介しなくてもだいたいみんなもう読んでると思うのだが、野田サトル『ゴールデンカムイ』(集英社・ヤングジャンプコミックス)は本当に面白い漫画ですよね。 私はおそらくアニメ化記念の100話無料公開の時に読み始めた…