気になる、面白そうな、読みたい本が無数に刊行されるのに対し、実際に読める本のなんと少ないことか……そんな悲しみに枕を濡らす日々であるが、せめて他の誰かが読んでくれれば少しは報われるのではないだろうか。そうでもないだろうか。
そんなわけで、2021年12月前後に刊行された気になる新刊いろいろを手早く紹介してみます。面白そうな本の表紙が並んでると嬉しいですし。
作品社より台湾文学の新しいシリーズが登場。まずは女性作家アンソロジーで、この後どんどん続く模様。楽しみですね。国書刊行会の「新しい台湾の文学」シリーズもよろしく。
こちらは韓国SFアンソロジー。しかもパンデミックSFに特化している。韓国の小説やエッセイの人気はすっかり日本でも定着したが、SFも続いてほしい。
『ずっとお城で暮らしてる』、短編『くじ』などで有名なシャーリイ・ジャクスンの初期長編が文遊社から登場。1948年の作。
ゴシック・カルチャー関連書の執筆でもおなじみの作家、高原英理によるきのこ小説。「新たなる「きのこ文学」の傑作」って書いてあるんだけどそんなジャンルありましたっけ?
最近何かと名前を聞く斜線堂有紀の恋愛小説集。気になってるんですがどれから読もうか迷ってます。
先日『彼岸花が咲く島』で芥川賞を受賞した台湾出身作家・李琴峰の受賞後第一作。胎児の意志を確認しないと子供が生まれないという設定の物語らしい。デビュー作の『独り舞』はすごい迫力でした(キツいシーンがあるので注意)。
現代最強のSF作家・飛浩隆の初期作品集&評論随筆集だった単行本『ポリフォニック・イリュージョン』を、小説部分と評論随筆部分に分けて文庫化。追加収録もあります。
最近、SFとマニアックな復刊もので絶好調の竹書房文庫より、新井素子のかっこいい短編集登場。これも日下三蔵編。
『赤色エレジー』でおなじみガロ作家・林静一の短編漫画を、なんと又吉直樹が選んでまとめた文庫。10編収録とのこと。
講談社選書メチエから派生した新シリーズ「講談社選書メチエ LE LIVRE」の一冊。中世哲学を専門としつつ近年はいろんな本を書いている山内志朗によるドゥルーズ入門。
ジュディス・バトラー(『ジェンダー・トラブル』など)の翻訳でも知られるフェミニズムの思想家・竹村和子の2002年の著作が岩波現代文庫より復刊。
『永続敗戦論』『武器としての「資本論」』などですっかり有名になった政治学者・白井聡の2007年のデビュー作がついに文庫化。文庫版解説は國分功一郎。
最近名著復刊の勢いがすごいちくま学芸文庫より、アドルフ・ロースの『装飾と犯罪』が登場。「装飾は犯罪だ」と主張する有名な本なので、とりあえず買って本棚に置いておきたい。表紙のロースハウスもかっこいい。この本については田中純の『建築のエロティシズム』(平凡社新書)で読んだ。
『正義論』で知られるリベラリズムの大物ロールズの入門書が中公新書で登場。『正義論』の9分の1くらいの金額で買えます。
急逝したデイヴィッド・グレーバーの話題書『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』の入門書が、翻訳者である酒井隆史の手により登場。クソどうでもいい仕事についてぜひ知りたい。
著者はイメージにまつわる問題を扱う哲学者で、この本が初の邦訳。世の中に流通するイメージと暴力の関係について詳細に論じた本のようで気になります。
アメリカの歴史研究者による2014年の本が人文書院より翻訳刊行。「資本主義や共産主義にも勝る第三の道として構想されたテクノファシズム」「先進技術と国民精神を結びつける思想」など強いフレーズがいろいろ。
『江戸の料理史』『歴史のなかの米と肉』などの著書がある原田信男による、和食文化の歴史的研究。
原書房より、一家に一冊は置いておきたい本が登場。呪具のことで困った時に最適。
民俗学者による本格的な忍者本。
ゼウスがいかにしてギリシア神話の最高神になったのかを追う研究。ゼウスも別に最初から一番偉かったわけではないのだ。京大出版より。
華人社会についての多くの著書をもつ山下清海による、横浜中華街の本。筑摩選書。
映画に現れる都市像の研究のようだ。著者はこれが初の著書でドイツ文学・ドイツ思想が専門とのこと。新曜社。
『文化系のためのヒップホップ入門』なども書いている大和田俊之による、アメリカのポップミュージック研究の最新版。テイラー・スウィフトからBTSまで。
青弓社の視覚文化叢書シリーズより。原題は「SCREENING THE BODY」で、科学技術による視覚がどのように身体を管理しようとして来たかという研究のようだ。著者はこれが初の邦訳。ジョン・バージャーを継承する仕事をしていると英文wikiにあるので、制度論的な視覚文化研究だろう。
ジェームズ・キャメロン自身によるコンセプトアートを集めた初の書籍とのこと。タイトルになっている「テック・ノワール」という言葉は、ターミネーターやブレードランナーに代表される暗めのSF映画を総称するジャンル名としても使われるらしい。
アングラ演劇を代表する一人、唐十郎の本格的な批評集。著者は日本の近現代詩が専門とのこと。幻戯書房。
ベストセラーを連発しているエクスナレッジの解剖図鑑シリーズからの宝塚編・第二弾。今回は作品の題材となる世界史にフォーカス。
トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンによる、映画化もされたミュージカルのビジュアルブック。
なんとここへきてカルティエ=ブレッソンのインタビュー集が刊行。読書人より。
Pヴァインから重要パンク本が2冊ほぼ同時刊行。どっちも必読だが2冊買うのキツい!選べない!
以上、気になる新刊チェックでした。気が向いたらまた来月やります。