もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

,

奈落の新刊チェック 2022年1月 海外文学・ミステリ・現代思想・歴史・芸術・怪異猟奇・蓬莱島・クィア神学・ソ連映画ほか

面白い本がありすぎて困っているみなさんこんにちは。ただでさえ時間がなくて苦しんでいるあなたをさらに苦しめてしまうかもしれない、面白そうな新刊チェックの時間です。私と一緒に、面白そうな本はいくらでもあるけど読む時間が圧倒的に足りないという受苦の世界へ参りましょう!

今回は2022年1月前後に発売したものです。

 

 

これぞ待望の一冊。日本の探偵小説そしてミステリーが成立する上で、いかに18世紀のゴシック小説にまで遡る異端の美学に影響を与えられてきたかを碩学・風間賢二がまとめた。読むしかない。

 

 

2006年に出た、同じく論創社楠本君恵訳の『不思議の国のアリス』に続き、16年ぶりに『鏡』が登場。訳者は未知谷からルイス・キャロルの研究所やマザー・グースの本も出してます。挿絵のブライアン・パートリッジは1953年生まれの英国のイラクトレーターらしい。『鏡』はとりあえずジャバウォックの歌をどんな風に訳しているか気になります。

 

 

ひとり出版社・共和国が出している海外文学シリーズ「世界浪曼派」(全部面白そう)の新刊。現代イタリアの巨匠の代表作とのこと。

 

 

みすず書房。著者のアラン・マバンクは1966年コンゴ共和国生まれの作家で、フランスの「コレージュ・ド・フランス」で初めて講義を行ったアフリカ出身の講師らしい。この本はその講義を書籍化したもの。

 

 

2001年にやはりハヤカワ文庫SFから出て話題となったものの新装復刊。作者は「ポスト・サイバーパンクの旗手」などと呼ばれる。他の作品も電子版のみ復刊。『ダイヤモンド・エイジ』は読んだけど面白かったです。

 

 

ファイト・クラブ』で知られるパラニュークの、これも2005年に出ていたものの新版復刊。カルト教団と過ごした半生を語りてが振り返る話。解説を、著書で映画『ファイト・クラブ』について書いていた北村紗衣が書いてます。

 

 

「死にたいキャバ嬢と推したい腐女子」とあるが、あらすじの最初から「焼肉疑人化漫画をこよなく愛する腐女子の由嘉里。」と書いてあってただごとではない感じがする。金原ひとみは昨年の『アンソーシャルディスタンス』(タイトルがいい)で谷崎潤一郎賞を受賞。

 

 

破局』で昨年の芥川賞を受賞した遠野遥の受賞後第一作。過激な内容が発売直後から話題になっている。デビュー作『改良』も河出文庫より発売。二文字熟語縛りはいつまで続く?

 

 

先月発売された『黒衣の聖母』に続く、「山田風太郎傑作選 推理篇」シリーズ。日下三蔵編。

 

 

アリスと火村先生が活躍するシリーズの新作はコロナ下のミステリ。ちなみにシリーズは30周年らしいがアリスと火村先生は年を取らないそうです。

 

 

2019年にデビューした作家の三作目。SF要素を導入したミステリで、作者は「令和のアルフレッド・ベスター」と呼ばれているらしいぞ。

 

 

岸本佐知子激推しの復刊ミステリ。「魔方陣を象った九星花苑で罌粟を栽培し、宴を催す秘密結社。その一員が急死した。傍らには十二神将像の一体が」「現代短歌の巨星が遺した絢爛豪華な傑作ミステリ」などなどどう考えても面白そうだ。

 

 

1939に台湾を縦断した旅行記と、日本郵船の嘱託として主催した船上座談会についての文章を集めたものらしい。内田百閒は船上座談会を主催していたのか。というか船上座談会という文化があるのだな。

 

 

89年生まれ著者の、『精神分析の再発明 フロイトの神話、ラカンの闘争』(岩波書店)に続く2冊目の著書。デカルトヘーゲル、カント、ソクラテスなどの哲学者がラカンに与えた影響についての本。

 

 

『ニック・ランドと新反動主義』(星海社新書)では実にザワザワさせてくれた著者の3年ぶり単著。資本主義の外部を目指す探索が60年代カウンターカルチャー復権に行きつく……のか??

 

 

ガチのキリスト教出版社である新教出版社から「クィア神学」と題した本が出るのだからどうしても気になってしまう。「大きな影響力を持つ三人の女性神学者の思想を精査し、フェミニズム(神学)とクィア(神学)に共通する課題と断絶の双方を明らかにする。」著者は同じく新教出版社から2014年に出たパトリック・S・チェン『ラディカル・ラブ クィア神学入門』の翻訳も手掛けている。

 

 

みんながなんとなく使ってる「ノブレスオブリージュ」についてこれを読めばわかるのかもしれない…… 著者はイギリス関連の著書多数。ジェイン・オースティンの翻訳も。

 

 

『チ-ズとうじ虫』(みすず書房)などで有名なイタリアの歴史家ギンズブルクの、文献をもとに歴史を研究することについての論集。目次を見るだけでもわくわくしてくる。翻訳はアガンベンでもおなじみ上村忠男。

 

 

表紙がド迫力だが、中世の人々が使用していた道具や美術品から、当時の人々の生きていた様子を分析するようだ。

 

 

日本統治下の台湾について、膨大な資料を集めて実証した本。日本の「帝国幻想」は気になるテーマです。

 

 

ヒトラーの独裁が成立した頃の海外での報道をまとめた本。全体主義政権の成立を同時代の人はどう見ていたのか。“フランス・ジャーナリズム会議賞”受賞作品だそうです。著者は「ル・モンド」の記者だったが同紙を批判する記事を書いて解雇された人らしい。

 

 

ソ連において強力なプロパガンダのメディアとして発達した映画が、理想とする建築空間をいかの映し出していたかについて。「映画は首都モスクワをいかに神話化し、解体したのか」面白くないわけがない。

 

 

2006年の単行本を新装復刊。平安貴族たちがいかに陰陽師を使って互いを呪い合っていたかを明らかにしてくれるらしい。著者は陰陽師に関する著書多数。歴史と言えばの吉川弘文館より。

 

 

こんどお札になるということで、津田梅子の関連本がいろいろ出ているようです。

 

 

タイトルが全てを語っている。著者はアメリカの作家、評論家、コラムニスト、脚本家で、モデルとなったドラマ「Shrill」がネトフリでみられるようだ。岡田育推薦。

 

 

ドキリとさせられるタイトルと副題。著者は社会学者で、差別問題についても著書多数。

 

 

以上、1月の気になる新刊でした。ではまた来月。

 

pikabia.hatenablog.com