もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

,

奈落の新刊チェック 2022年9月 海外文学・SF・現代思想・歴史・九段下駅・アレント・ホラーの哲学・ゴシック全書ほか

最近めっきり涼しくなってきているという噂ですが、いかがお過ごしでしょうか。朝夕冷えそうですので風邪をひかぬようお気を付け下さいませ。10月なのでアニメも新しいのが始まりますね。そんなこんなで9月刊行の新刊紹介です。

 

 

作者のアンネマリー・シュヴァルツェンバッハは1908年生まれのスイス人で、1930年代に同性の恋人とともに中近東を旅したという。これはその経験をもとにした小説集。ドイツ語の文学・童話・ファンタジー翻訳の大家である酒寄進一訳。

 

2019年に刊行されていたものが文庫化。なんとカポーティが10代から20代前半の時期に書いた未発表作が集められているという。翻訳はポー、ヘミングウェイフィッツジェラルドなど王道アメリカ文学を訳しまくっている小川高義

 

ロシアの怪物的作家ソローキンの、2013年に単行本で出ていた小説がこのタイミングで文庫化。2028年に復活した「帝国」が舞台のSF。訳者の松下隆志はソローキン作品を何冊も訳しています。

 

バタイユの代表的な本のひとつが初めての文庫化。訳者の江澤健一郎はバタイユのほかディディ=ユベルマンも手掛けています。

 

絶好調の竹書房文庫SFより、米中に分割統治された近未来の東京を舞台にしたSFミステリー。各エピソードを4人の作者が書き継いでいく形式のようだ。

 

ラフカディオ・ハーンの『怪談』を、なんと円城塔が翻訳。気になります。

 

2002年にデビューし、ヨーロッパを舞台とした4作のシャルル・ベルトランシリーズなどを遺して他界した本格ミステリ作家、加賀美雅之の単行本未収録作を集めたもの。

 

特にブローティガンの翻訳で知られる藤本和子の1994年に出たエッセイの文庫化復刊。

 

フーコーの未刊の講演と論文を集めたもの。タイトル通り、フーコーの中心的なテーマである狂気、言語、文学に関するものが収録されています。訳者は『ミシェル・フーコー、経験としての哲学: 方法と主体の問いをめぐって』を書いた阿部崇と、『世界文学アンソロジー: いまからはじめる』の共編者などもつとめる福田美雪。

 

講談社現代新書から刊行開始された新シリーズ「現代新書100」の第1弾が、アレントショーペンハウアーの2冊同時刊行。これは本文100ページ以内の新書で思想家・哲学者をコンパクトに紹介するもの。こういうのは売れてほしいですね。

 

著書『理不尽な進化』や、山本貴光とのコンビ仕事、他にも様々な人文・思想・哲学に関する活動で知られる吉川浩満による哲学入門。著者の個人的な、日常のエピソードを手掛かりに、哲学との出会い方を考える。

 

分析美学・大衆芸術研究を専門とする著者による、本格的な「ホラー」の哲学的考察。古典から現代ホラーまで広く分析されているようで面白そう。訳者の高田敦史もフィクションの哲学を専門とするそうです。

 

古代の神話から現代のポピュラーカルチャーに至るまで、人と神話の関係についての広範な論文を集めた論集。

 

芸術関係ではうれしいカラー版中公新書。副題の通り、カトリック東方正教会の双方についての美術史をおさらいできます。著者には『初期キリスト教・ビザンティン図像学研究』などガッツリした本も。

 

イギリスを代表する文学史家による、フルカラー図版多数の、中世から現代文化まで網羅した本格「ゴシック」全書、しかも監修は巽孝之となればもう買うしかないのでは。訳者の大槻敦子は歴史、社会科学、科学史などのジャンルで訳書多数。

 

20世紀美術に関する本を多く書いている著者による、デュシャンを転換点として現代アートについての本。著者は昨年も『マルセル・デュシャン 新展開するアート』を同じく未知谷から刊行しています。

 

これは練馬区立美術館で開催中の展覧会図録。日本におけるマネ受容をテーマに、マネの作品とマネに影響を受けた作品群が並びます。

 

世界各地の母系社会を、フォトジャーナリストである著者が記録した本とのこと。

 

江戸時代後期、日本にやってきた二頭のラクダが人気を博したという。その記録から読み解く、江戸時代における「異国」の認識。著者には『江戸の見世物』などの著書もあり。

 

米軍統治下の沖縄での生活に関する多彩な事項111項目を収めた生活史事典。

 

 

 

ではまた来月。