もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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奈落の新刊チェック 2022年10月 海外文学・SF・現代思想・歴史・闇の奥・パラディーソ・スピノザ・布団の中から蜂起せよ・ゴシックハートほか

いよいよ月の数字も2桁になって年の瀬が近づいてきた感がましましですが皆様いかがお過ごしでしょうか。「7」を意味する「セプト」から7月がセプテンバー、「8」を意味する「オクト」から8月がオクトーバーという名前になったのに、手前にジュライとオーガストが割り込んだので9月10月にズレたという説明がいまいち納得いかないブログ管理人です。そんなにセプテンバーとオクトーバーを残したかった?

そんなわけでここに書く内容のネタ切れも甚だしいですが、10月に出た新刊チェックいきましょう。

 

藤野可織による最強のバディ小説が待望の文庫化。こちらの記事で紹介してますのでぜひご覧ください。

pikabia.hatenablog.com

 

ハヤカワ演劇文庫、いいですよね。今月出たのは「マレビトの会」の松田正隆

 

Deluxe Edition』に続く、阿部和重の訳10年ぶりの短編集。『オーガ(ニ)ズム』でついに完結した神町三部作はどれも重厚な長編でしたが、切れ味するどい短編も好きです。

 

なんと刊行予告から20年を経て国書刊行会より発売されたという、キューバの作家による「ラテンアメリカ文学不滅の金字塔」。『百年の孤独』のような何世代にもわたる長大な小説のようですが、一体どんな内容なのか…… 翻訳はガルシア=マルケスやバルガス=リョサほか南米文学をたくさん訳している旦敬介。

 

コンラッドの有名作が新潮文庫で登場。翻訳はヘミングウェイや「ハンニバル」シリーズのトマス・ハリスなど英米文学を多数訳している高見浩。光文社古典新訳文庫版とどっちで読むか迷う。

 

大英帝国時代のインドを舞台にしたE.M.フォースターの代表作が新訳文庫化。オーウェルやイシグロを手掛ける小野田健訳。

 

幻想的な作風の、戦後ドイツを代表する女性作家の短編集とのこと。翻訳は『犯罪』がベストセラーになったシーラッハからブレヒトまでドイツ文学を多数訳している酒寄進一。

 

岸本佐知子柴田元幸のセレクトによる現代英語圏異色短篇コレクションとなれば面白くないはずがない。

 

『猫語のノート』でおなじみポール・ギャリコのミセス・ハリスシリーズが映画化をきっかけに角川文庫より刊行開始。翻訳は旧版から引き続き、コナン・ドイルを手掛ける亀山龍樹。

 

田舎の農場に住む夫婦のもとに、夫が宇宙移住者の候補になったという知らせが届くというスリラー。気になります。作者はデビュー作『もう終わりにしよう。』でシャーリイ・ジャクソン賞の最終候補になったらしい。早川やヴィレッジブックスでミステリ系の訳書が多い坂本あおい

 

注目の批評家、高島鈴の初のエッセイ集がついに刊行。高島鈴の文章を読んだことのない方はこちらのWEB連載をどうぞ。

巨大都市殺し|かしわもち 柏書房のwebマガジン|note

くたばれ、本能。ようこそ、連帯。|webちくま

 

イギリスにおける当事者の生活の実像、どのような問題に直面しているかという現実の問題を、調査によって詳述した本。著者はこれが初の著書とのこと。翻訳は『極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる』の著作もある高井ゆと里。

 

日本文学、クィアスタディーズを専門とする著者による初の著書で、トラウマを語ることをテーマとした文学批評。多和田葉子、李琴峰、大江健三郎などが取り上げられているようです。

 

1986年上海生まれでデリダの中国語訳も手掛けるという著者による魯迅論。しかも日本語で書いているらしい。

 

スピノザの方法』でデビューし、『はじめてのスピノザ』も書いている國分功一郎による、スピノザの全体像をまとめた決定版新書が登場。新書だけど400ページあります。

 

人間が人間でなくなるとき』などフッサールに関する著書のある岡山敬二による、「哲学とは、『わからなさ』を生きることだ」というテーゼによる哲学入門。

 

古代ギリシアの芸術をあらゆる芸術の理想像と主張して後の美術史に巨大な影響を与えたヴィンケルマンの主著が岩波文庫入り。

 

サン=シモンやフーリエなど、名前はよく聞く初期社会主義の思想家たちに関する新書が登場。政治思想史を専門とする著者には『サン=シモンとは何者か』などの著書もあり。

 

西ローマ帝国滅亡後は東ゴート王国の首都であり、のちにビザンツ帝国のイタリアにおける拠点となったイタリアの都市ラヴェンナ。「西の帝都」と呼ばれたこの都市がヨーロッパ世界の形成に果たした大きな役割を繙く大著。著者は初期キリスト教史、ビザンツ女性史が専門とのことで、他に『ビザンツ 驚くべき中世帝国』の邦訳あり。訳者の井上浩一には『生き残った帝国ビザンティン』などの著書もある。

 

1993年にNHK出版から出ていた若桑みどりの定番書がめでたく文庫化復刊。美術を読み解く方法のひとつであるイコノロジーの入門書はこれでばっちりでしょう。同じくちくま文庫の『イメージの歴史』もお勧め。

 

鏡と皮膚』『肉体の迷宮』『シュルレアリスムのアメリカ』などの著書がある美学者・批評家の谷川渥による、古代とバロックを行き来するローマ芸術論集。

 

小説家・文芸評論家の高原英理による2004年刊行のゴシックの基本図書が2度目の復刊。

 

1924年マカオ生まれの著者による、九龍城の歴史を詳細に記述した一冊。翻訳者の倉田明子は『中国近代開港場とキリスト教:』など近代中国と香港に関して著書・訳書あり。

 

横浜能楽堂芸術監督で、能に関する著書も多い著者によるわかりやすそうな能の通史。

 

タイムラインの殺人者』の邦訳もあるSF作家兼編集者兼ブロガーの著者による、ポンペイやアンコールなど古代都市の消滅に関する本。歴史書を多数手がける森夏樹訳。

 

それではまた来月。