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台湾日記:古都台南で古跡を見たり麺を食べたり

台湾南部にある台南の街に降り立って、まず驚いたのは計程車ジーチェンチャー(タクシー)が走る速度の遅さだった。

台北のタクシーは運転が荒く、とにかく飛ばす。運転手によってはわりと怖い。ちなみに交通事故も多い。ところが台南の駅で鉄道を降り、最初に乗ったタクシーは実にエレガントな運転ぶりでとても驚いた。台北はせわしない街なのだ。

確かに台南には、のんびりとした雰囲気がある。この街は台湾の京都などとも呼ばれる、台湾の古都だ。早くから漢人が入植して港を作り、17世紀にはオランダがゼーランディア城を建てて貿易の拠点とし、後に明の将軍、鄭成功ジェンチェンゴンがそれを攻め落とす。清朝が台湾を平定すると台南に「台湾府」が置かれ、ここが台湾の首府となった。

台北から高鐡ガオティエ(新幹線)で台南まで南下し、そこから台湾鉄路タイワンティエルー沙崙シャールン線に乗り換えて市中の臺南車站タイナンチャージァン(台南駅)へ移動する。1936年に建てられた駅舎は瀟洒な建築で、かつてはこの建物の中にホテルとレストランがあったらしい。ぜひこの建物に泊まってみたかった。

臺南車站(台南駅)のホーム。警察署と一体化しており、奥にパトカーが見える。

臺南車站駅舎(1936年)。この時工事中だった。

 

古都なので、古跡をいろいろ見て回ることになる。前述のゼーランディア城は、鄭成功によってオランダが掃討されてからは安平城と名が変わり、現在は安平古堡 アンピングーバオと呼ばれている。城自体は残っていないが、小高い丘に城壁が張り巡らされた、いかにも城という感じの場所だ。

ゼーランディア城、後に安平古堡。

鄭成功の時代には台湾全体の最高行政府だった赤崁楼チーカンロウもオランダが建てた城だが、こちらは中国風の意匠になっている。

赤崁楼。別名プロヴィンティア。

他にも台湾最古の孔廟コンミャオ孔子廟)や、19世紀に建てられたイギリス公館である徳記洋行ダージーヤンハンなどいろいろ見て回ったが、中でも異彩を放つのは安平樹屋アンピンシューウーと呼ばれる倉庫跡だ。ここは19世紀から20世紀初頭に建てられた倉庫群なのだが、使用されなくなった後、その全体がガジュマルの樹によって浸食され、さながら鉄と煉瓦と樹木が一体となったかのような異様な空間となっている。

安平樹屋。広大な領域がこの状態になっている。

 

 

台湾最初の百貨店・林百貨リンバイフォ。この周辺は台南市街の中心部だ。

 

 

台南は食べ物も美味しい。全体的に、台北よりも優しい味のものが多いような気がする。台南名物として有名なのは牛肉湯ニョウロウタンという牛肉スープで、新鮮な牛肉をシンプルなスープで茹で、ショウガと一緒に食べる。これは当地では朝ごはんらしい。

牛肉湯。

ところで別に、いわゆる名物を食べなくても美味しいものはいくらでもあるわけで、まあだいたい何を食べても旨いのだが、台湾で美味しい店を見つける方法は簡単だ。単に、客がいっぱいいる店に入ればいい。台湾は圧倒的に外食文化なので、住民が日常的に外で食事をする。彼らが普段食べているものが、一番美味しいものというわけだ。また、台湾の人は並んで待つのが苦にならないようで、人気の店はいつも並んでいる。時間があればその列に加わるのがいい。

台南で食べて印象に残ったのは、そのような感じで通りかかった店で食べた意麺イーミェンだ。台南の意麺は、小麦粉と卵で作られた麺で、なんても茹でる前に揚げているらしい。この麺と簡単な具をあっさりしたスープに入れただけの麺だが、これが異様に美味で二日連続で食べてしまった。

意麺。

 

 

こちらは台南についての、イラスト主体の異色ガイドブック。数年前からの台湾ブームで、ガイドブックに限ってもかなり多彩なものが出ている。