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Dream Wifeの新曲「Leech」の怒りのパワーがすごい

「お前は彼女に値しない」

 

ロンドンの3人組バンド、ドリーム・ワイフの2年ぶりの新曲「Leech」がすごい迫力なので盛り上がってしまった。

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ボーカルのラケル・ミョル、ギターのアリス・ゴー、ベースのベラ・ポドパデックからなるドリーム・ワイフは2016年にデビューした、シンプルで勢いのあるインディー・ロックもしくはパンクロックを演奏するバンド。2018年にファーストアルバム「Dream Wife」を、2020年にセカンドアルバム「So When You Gonna...」を発表している。今回はセカンドアルバム以来の新曲というわけだ。

ロンドンの3人組Dream Wife

ちなみに私はこのバンドのTシャツをネットで注文して買ったのだが、いざ届いてみてから、一体どんな顔をしてでかでかと「DREAM WIFE」と書いてあるTシャツを着ればいいのかという問題に気づき、結局まだ一度も着ていない。いつかライブを見られることになったら着ていきたい。

 

さて11/9に発表されたばかりの新曲「Leech」だが、Leechというのはヒルのこと。あの、血を吸うヒルである。

低く抑えめだが緊張感のある演奏と歌で始まり、徐々に切羽詰まった感じになって、コーラスでいきなり激しい演奏とものすごいシャウトに突入、ボーカルのラケルはバンド史上最高の金切り声で「The leech is out for blood(ヒルが血を吸いに来る)」と絶叫する。

歌詞の内容は、疑いようもなく、立場の弱い者を食い物にする人々に対する怒りの言葉だ。詩的な言葉と、リアルなエピソードと、畳みかけるような問いかけによってそれが語られる。

 

かなり意訳だが、1コーラス目の歌詞を訳してみた。

(誤訳だなと思った箇所は教えてください!)
 

ヒルが血を吸いに来る
ヒルはみんなのことを知ってるし、どうやらみんなもヒルのことを知っている
やつらはにっこり笑って手を振って、偽物の歯を見せて、
頭と尻を撫でられて、ワインが注がれ、終わらないおしゃべりが貪られ、
いわゆるゲートキーパー、まさにレジェンドって感じの
そう、男の子たちは女の子たちと遊んであげる
でもそれは、見せびらかすためのただの飾りでは?
お前は何か特別なことを成し遂げたつもり?
お前は特別なつもり? お前がヒルじゃなくて?
 
どのツラさげて彼女をハグするつもり? お前は彼女を愛するに値しない
彼女の言葉にも、彼女が支えるものにも、
彼女が生み出すものにも、彼女の強さにも値しない お前は彼女に値しない
 
ほら、ヒルが来る 愛を知っている人たちから血を吸うために
愛を知っている人たちから血を吸うために
 
ちょっとは想像してみろよ
ちょっとは想像してみろよ
ちょっとは想像してみろよ
ちょっとは想像してみろよ
 
ヒルが血を吸いに来る
ヒルが血を吸いに来る
ヒルが血を吸いに来る
やつらは止まらない、最後の一滴を吸い尽くすまで
(Dream Wife 「Leech」)

 
実際の英詞は検索などして読んでもらいたいが、この後にも

Do you use and abuse your power to the young women that listen to what you say?

(お前は話を聞いてくれる若い女にその力を濫用するか?)

Do you hide behind the illusions of power

(力の幻影の後ろに隠れるのか?)

Fuck those you call themselves a friend and don't lift a finger

(友達面をしながら何もしてくれない奴らはクソくらえ)

Fuck those who say be patient wait for your turn

(辛抱強く君のターンが来るのを待てと言ってくる奴らもクソくらえ)

……などなど印象的なフレーズが満載である。

 

そしてメインコーラスと同じように連呼される重要なフレーズが、「Just have some fucking empathy」だ。empathyは共感や感情移入、他者の気持ちを理解することなどを意味する。

特にSNSなどを見ているとそう思うが、現在は何か納得いかないことがあっても、どの立場から誰を批判すべきかがとても難しい。誰もが被害者にも加害者にもなりうるし、そう考えると何も言えなくなる。

しかしどこかで怒りの声は上げなければいけない。少なくともロックバンドはそれをするのに適した形態かもしれない。ここにある怒りに、無条件に同一化はしなくとも、しかし自分のこととして聴くこと。あるいは、自分に向けられた怒りとして聴くこと?

 

www.nme.com

NMEによるインタビュー記事。

 

ついでに過去の曲も紹介しよう

 

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ファーストアルバム「Dream Wife」にも収録されているが、その前のデビューEPにも入っている最初期の曲。メロディアスでペナペナのギターも可愛い、たぶんバンド史上一番ポップな曲。癖がありすぎて「ナバー、アン」としか聞こえない「Never ends」の発音もいい。

 

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こちらもデビューEPとファーストアルバムの両方に収録されている初期の曲。おそらく「これぞドリーム・ワイフ」というバンドのイメージを決めた1曲。

 

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ミドルテンポのファーストアルバム収録曲。フォーマルに決めたメンバーがかっこいい。繰り返される、「I am not my body, I am somebody(私は「誰か」であって、単なる身体じゃない)」というフレーズが印象的。

 

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トンチキなPVで第2章の幕開けを告げた、セカンドアルバム「So When You Gonna...」

からの先行シングル。サビで「Sports!」と連呼する軽快で楽しい曲になってます。

 

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セカンドアルバムからの可愛らしい曲。でも歌詞は様々な別れの言葉を並べる物悲しい雰囲気。このアルバムは曲調の幅が広がり、ラスト曲はしっとりピアノバラードだったりします。(そこからの今回の新曲だったので驚きも大きかった……)