もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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2025-01-01から1年間の記事一覧

菊地章太『儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間』 儒・仏・道が混じり合う庶民信仰の世界

三つの宗教の複雑な関係を軽妙に語る 儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間 (講談社学術文庫) 作者:菊地章太 講談社 Amazon 今回紹介する講談社学術文庫『儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間』の著者、菊地章太は比較宗教学を専攻、またフランスでカトリッ…

奈落の新刊チェック 2025年11月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・死者たち・夢遊の大地・絵画について・想起のトポグラフィー・セレブの誕生ほか

さあいよいよ年の瀬ですが、皆様2025年にやり残したことはございませんでしょうか。ないわけないですよね。今年もたくさんの面白そうな新刊をチェックしてきましたが、来年もチェックしていきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。では11月分…

『フィツジェラルド短編集』 代表作「氷の宮殿」「バビロン再訪」など収録の傑作集

野崎孝訳による、フィッツジェラルドの代表作を集めた短編集 フィツジェラルド短編集(新潮文庫) 作者:フィツジェラルド 新潮社 Amazon さて、今回紹介するのは新潮文庫から出ている、野崎孝訳によるフィッツジェラルドの短編集『フィツジェラルド短編集』…

奈落の新刊チェック 2025年10月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・ペンテレージア・侵蝕列車・月光の仕事・ネクロポリティクス・哲学のホラー・ポストヨーロッパほか

こちらの新刊チェック、新刊というからには以前出ていたものの文庫化や復刊よりも、初めて出た本の方を前に出して紹介するようになんとなくしているのですが、しかし考えてみれば大半の読者にとっては、文庫化や復刊で目の前に現れた本は新しい本なのだと思…

山尾悠子『飛ぶ孔雀』 詩的な秩序が支配する、緻密な幻想文学

泉鏡花文学賞・日本SF大賞・芸術選奨文部科学大臣賞の三冠に輝く小説 飛ぶ孔雀 (文春文庫) 作者:山尾 悠子 文藝春秋 Amazon 「幻想文学」や「幻想小説」という言葉があるけれど、そう呼ばれるのにこれ以上相応しいものは他に思いつかない……と思ってしまうの…

奈落の新刊チェック 2025年9月 海外文学・SF・哲学・現代思想・歴史・オベリウ・台北人・候景・人魚紀聞・〈私たち〉とは何か・食権力・アナキズム・福音派ほか

短い秋が早くも終わろうとしていると聞く今日この頃ですがいかがお過ごしでしょうか。熱帯に長く暮らしているので、今後日本に帰ったとしても季節の変わり目に耐えられる気がしません。みなさまぜひお気を付けください。そんなこんなで9月分の気になる新刊チ…

田崎英明『間隙を思考する グリッチ・コミュニズムの方へ』 多彩なテーマの批評を貫く、バイナリーな世界への抵抗

ヒップホップから始まり、労働と身体、政治へと至る批評の旅 間隙を思考する グリッチ・コミュニズムの方へ 作者:田崎英明 以文社 Amazon 今回紹介するのは批評書『間隙を思考する グリッチ・コミュニズムの方へ』なのだけれど、まずは長いキャリアをもつ著…

『エイリアン:コヴェナント』 アンドロイドは創造主を目指す、あるいは美と暴力

かなり「ブレードランナー」っぽい「エイリアン」の傑作(賛否両論あります) 『エイリアン:コヴェナント』より エイリアン:コヴェナント (字幕版) マイケル・ファスベンダー Amazon さて今回の記事はリドリー・スコット監督による『エイリアン:コヴェナ…

奈落の新刊チェック 2025年8月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・ニューロマンサー・風になるにはまだ・鏡の国の生き物・スネーク・ピープル・斜め論・帝国の書店ほか

暦は九月となりましてようよう暑さも和らいできたと思ったら今年がもう四ヶ月しか残されていない今日この頃ですが、新刊は待ってはくれません。みなが年間ベストを決められるほど本をたくさん読めるわけではないですが、年に何冊かはこれだという新刊に出会…

トラヴィス・バルドリー『伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く』 意表を突く設定、かつ王道のファンタジー

オークやサキュバス、一様ではない異種族たちの出会いの物語 伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く (創元推理文庫) 作者:トラヴィス・バルドリー 東京創元社 Amazon 今回紹介する『伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く』は、アメリカの作家トラヴィス・バル…

星野太『崇高と資本主義 ジャン・フランソワ・リオタール論』 芸術はどのようにして資本主義を批判しうるか

「ポストモダン」の思想家リオタールの美学・芸術論 崇高と資本主義:ジャン=フランソワ・リオタール論 作者:星野 太 青土社 Amazon 今回紹介する『崇高と資本主義 ジャン・フランソワ・リオタール論』は、『崇高の修辞学』『美学のプラクティス』など、美…

奈落の新刊チェック 2025年7月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・シナバー・修道院覚書・屍の街・魂の文化史・シン・アナキズム・賽の河原ほか

日本はいよいよ夏本番かと思いますがいかがお過ごしでしょうか。すでにさんざん言われていることと思いますが、日照対策にはとにかく日傘です。私は熱帯に住んでおりますが、日傘を持たずに外出することはありません。あるとないとでは大違いですので、みな…

マッシモ・カッチャーリ『ヨーロッパの地理哲学』 古代ギリシアに始まる「ヨーロッパ」の起源を哲学的に探る

イタリア現代思想における重要人物の代表作 ヨーロッパの地理哲学 (講談社選書メチエ) 作者:マッシモ・カッチャーリ 講談社 Amazon 1944年生まれの哲学者にして政治家でもあるマッシモ・カッチャーリは、アントニオ・ネグリやジョルジョ・アガンベンと並んで…

ヴァシーム・カーン『帝国の亡霊、そして殺人』 インド独立の時代と、女性刑事の戦いを描く歴史ミステリ

英国作家による、1949年のインドを舞台とした重厚なミステリ 帝国の亡霊、そして殺人 (ハヤカワ・ミステリ) 作者:ヴァシーム カーン 早川書房 Amazon 今回紹介する『帝国の亡霊、そして殺人』は、インドを舞台としたミステリを多数発表している英国の作家、…

奈落の新刊チェック 2025年6月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・ジェイムズ・歓楽の家・レモネードに彗星・死体埋め部・カリブ海・内在的多様性批判・レヴィナス・戦争と西洋・琉球処分ほか

参院選が近い今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。人権や公共性の軽視が世間で目立つようになると読書好きとしての無力感を感じますが、ひとまずは身の回りの人と政治の話をすることくらいしかできることが思いつきません。そのような折にも、…

ジークアクスを楽しむために、別に旧ガンダムのことを気にしなくてもいい。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の気負わない楽しみ方

「考察」をしてもいいし、しなくてもいいし、わからなくてもいい もうどうなってもいいや COVER Corp. Amazon この記事を書いている時点で残り2話となっている『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』、私もいろいろ考えつつ楽しんでおり、終わったら何か内容について…

奈落の新刊チェック 2025年5月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・惑星語書店・両膝を怪我した・ヒカリ文集・政治の美学・写真講義・移動と階級・男性学入門ほか

私事なんですけれでも、当ブログは毎月こうやって新刊チェックを投稿しているわけですが、できれば一か月の間に「新刊チェック+最低1記事」は投稿したいなあと考えております。今のところこのペースは維持できているのですが、そのうち忙しくなった場合は「…

古怒田望人/いりや『クィア・レヴィナス』 規範的なものの中から逸脱を引き出す、クィア・リーディングの実践

レヴィナスの哲学を、レヴィナスに逆らって読む クィア・レヴィナス 作者:古怒田望人/いりや 青土社 Amazon 『クィア・レヴィナス』は、哲学者エマニュエル・レヴィナスについての博士論文をもとにした、古怒田望人/いりやのデビュー作。著者のプロフィー…

奈落の新刊チェック 2025年4月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・アフリカ文学・キャリントン・クィア・見晴らし台・夜と霧の誘拐・知覚の宙吊り・中国美学・イザドラ・ダンカンほか

月初更新といいながらゴールデンウィークも過ぎてしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今月は国書刊行会から新しい叢書が二種類も創刊していて驚きます。他にも面白そうな本がいろいろ出ていますのでぜひご覧ください。2025年4月分の新刊です。 …

カトリーヌ・マラブー『泥棒!アナキズムと哲学』 哲学者たちはなぜアナキズムを盗んだのか

フランス現代思想を代表する哲学者によるアナキズム論 泥棒!:アナキズムと哲学 作者:カトリーヌ マラブー 青土社 Amazon 今回紹介する『泥棒!アナキズムと哲学』は、かなり変わったタイトルの本ではあるものの、実は真っ向から哲学とアナキズムの関係を問…

『九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション』 重厚でポリティカルなSF女性バディ警察小説

分断された東京を舞台とした、連作サイバーパンク警察小説 九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション (竹書房文庫) 作者:マルカ・オールダー,フラン・ワイルド,ジャクリーン・コヤナギ,カーティス・C・チェン 竹書房 Amazon 今回紹介する竹書房文庫…

奈落の新刊チェック 2025年3月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・半生の絆・上海灯蛾・クィア・レヴィナス・非二元的な性・財政民主主義・帝国と観光・犬狼伝説ほか

ようやく冬が終わったようですがいかがお過ごしでしょうか。今回の新刊チェックは、人文系の新しい著者のデビュー作、それも博士論文をもとにした本が多く、リストアップするだけでも盛り上がりました。(もちろん網羅しているわけではないので他にもあるで…

永野護『ファイブスター物語』第18巻のパルスェットの話を読んで呻くだけのブログ

待望の最新巻を読んでおおいに楽しみつつ、呻いた。 ファイブスター物語 18 (ニュータイプ100%コミックス) 作者:永野 護 KADOKAWA Amazon 近年コンスタントに新刊が出ていてありがたい永野護の長寿連載コミック『ファイブスター物語』、今回も前巻からちょう…

将基面貴巳『反逆罪 近代国家成立の裏面史』 「何が反逆か」の変遷が歴史を語る

「反逆罪」はどのように近代国家を形成したか 反逆罪 近代国家成立の裏面史 (岩波新書) 作者:将基面 貴巳 岩波書店 Amazon 今回紹介するのは、将基面貴巳による2024年の岩波新書『反逆罪 近代国家成立の裏面史』。著者は2002年の『反「暴君」の思想史』(現…

奈落の新刊チェック 2025年2月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・族長の秋・水曜生まれ・影犬・怪獣・近現代詩・労働者・道徳的責任・国民皆保険ほか

個人的な事情ですが最近いろいろと忙しくなっておりまして、当ブログも下手をするとこの新刊チェックがメインコンテンツになってしまいそうな状況です。せめて、一ヶ月の間に、新刊チェックの他に一本くらいは記事を書きたいものですが、どうなることやら。…

福尾匠『非美学──ジル・ドゥルーズの言葉と物』 哲学が他者とポジティブな関係を築くために

哲学は、芸術をどのように語ればいいのか 非美学 ジル・ドゥルーズの言葉と物 作者:福尾匠 河出書房新社 Amazon 今回紹介する『非美学──ジル・ドゥルーズの言葉と物』は、2018年に『眼がスクリーンになるとき:ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』でデビュー…

奈落の新刊チェック 2025年1月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・羊式型人間・堕天使拷問刑・城南・ヨーロッパの地理哲学・非暴力主義・アッシリア・スカルパ・つながらない権利ほか

世界が混迷の度を深めているのか、あるいは長いスパンで同じことを繰り返しているのか、いずれにせよ深刻な事態ばかりの昨今ですが、危機に備える言葉を持つべく本を読み、よい本を出している著者と出版社を支援していきたいところです。アマゾンのリンクを…

酒井健『バタイユ入門』 現代思想に繋がる、「理性」の批判者

近代的理性の批判者バタイユの入門書 バタイユ入門 (ちくま新書) 作者:酒井健 筑摩書房 Amazon ジョルジュ・バタイユについては名前はよく聞くし、本を読んでいるとよく出てくるし、小説も読んだことがあるので興味はあったものの、あまりよく知らなかったの…

藤高和輝『バトラー入門』 あまり哲学的ではない方法で、『ジェンダー・トラブル』に入門する

ジュディス・バトラーと、フェミニズム/クィア理論の名著『ジェンダー・トラブル』 バトラー入門 (ちくま新書) 作者:藤高和輝 筑摩書房 Amazon 今日、ジュディス・バトラーの名前はわりとよく知られているのではないかと思う。フェミニズムやジェンダー理論…

奈落の新刊チェック 2024年12月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・グラン=ギニョル・物語ることの反撃・廃墟建築家・カフカ・チャンドラー・カリガリ博士・モナドロジー・K-POPほか

あけましておめでとうございます。のんびり更新している当ブログですが、今年もよろしくお願いいたします。今年も主に備忘録としてやっていきます。では月初恒例の新刊チェック、昨年12月分をどうぞ。 感応グラン=ギニョル (創元SF文庫) 作者:空木 春宵 東…