芸術
表象文化論の大家が、イタリア映画の巨匠たちを読み解く イタリア芸術のプリズム: 画家と作家と監督たち 作者:温司, 岡田 平凡社 Amazon 『イタリア芸術のプリズム 画家と作家と監督たち』は、このブログでもすでに何冊か著書を紹介している、美術史・表象文…
社会と関わるものとしての現代美術 現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル (中公新書) 作者:山本浩貴 中央公論新社 Amazon 2019年に刊行された中公新書『現代美術史』は、自身も現代美術作家であり現在は金沢美術工芸大学で教鞭をとる山本浩貴による、…
著者の代表作『イメージ、それでもなお』に連なる論文集 現代フランスの、哲学的な美術史家とでも呼ぶべきジョルジュ・ディディ=ユベルマンの代表的な書物に『イメージ、それでもなお』があるが、その内容に関連した3篇の文章を集めた日本独自の論集が、今…
キリストの「身体」を読み解く表象文化論 キリストの身体―血と肉と愛の傷 (中公新書) 作者:岡田 温司 中央公論新社 Amazon 岡田温司についてはこのブログでも何度か紹介しているので重複になるかもしれないが、この著者には大きく分けて二種類の著作群がある…
表象(representation)の学問 「表象文化論」という学問のジャンルを聞いたことがあるでしょうか。まだあまり世間的に定着している言葉ではないのですが、文学や芸術、イメージについての研究を始めとして、それに関わるものとしての歴史、社会、そして哲学…
ゴシック/ゴス・カルチャーの基本図書が文庫化 高原英理による『ゴシックハート』は2004年に講談社より単行本として刊行され、2017年に立冬舎文庫として文庫化、そして2022年にちくま文庫として二度目の文庫化となった。本書は日本においてもゴシック/ゴス…
江美留には、或る連続冒険活劇映画の最初に現われる字幕が念頭を去らなかった。明るいショウインドウの前をダダイズム張りの影絵になって交錯している群衆を見る時、また夏の夜風に胸先のネクタイが頬を打つ終電車の釣革の下で、そのアートタイトルは――襟元…
「未来派」についての数少ない入門書 「未来派」をご存知だろうか。20世紀初頭のイタリアで起こった前衛芸術で、急速に発達する工業化・都市化・機械化を反映した総合的(詩・絵画・彫刻・建築・音楽含む)な芸術運動だ。後続するダダやシュルレアリスム、ロ…
著名な批評家による、戦争やテロリズムに関する写真論 スーザン・ソンタグは1933年に生まれ、2004年に没したアメリカの作家・批評家である。『反解釈』や『写真論』などの著書、あるいは「キャンプ」という美的概念の定義などでよく知られている。(小説も書…
近代建築について知りたい! 私は建築に関してど素人なのだが、でも芸術の本を読んでいると建築のことがよく出てくるし、ちょっと建築、特に私は近代に関する本をよく読むので近代建築のことが知りたいなあと思っていた際にたまたま新刊で出ていたのがこの中…
岡田温司の著書がすごく多いのでまとめてみた。 これまで岡田温司の本を紹介する記事を二度書いたのですが、その度に「著書が多いな……」と改めて感じ入り、かつ把握しきれないなと思いましたので、自分用のメモも兼ねてまとめてみよう!ということになりまし…
ヴァレリー読んだことなくても大丈夫! ヴァレリー 芸術と身体の哲学 (講談社学術文庫) 作者:伊藤 亜紗 講談社 Amazon 『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』は、美学と現代アートを専門としつつ、『目の見えない人は世界をどう見ているのか』『手の倫理』といっ…
三人の肖像写真家 今回は、以前当ブログで『ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読』を紹介した多木浩二の本をもう一冊紹介しよう。 pikabia.hatenablog.com 今回取り上げる『肖像写真』(岩波新書)は、美術、写真、映画、建築など多彩な分野の批評を残…
この分厚い本はどんな本なの? デヴィッド・ボウイ 無を歌った男 作者:田中 純 岩波書店 Amazon 皆様、デヴィッド・ボウイを聴いたことがあるだろうか。少なくとも名前くらいは知っているのではないだろうか。1960年代末から、2016年に死去するまで音楽活動…
これは何についての本か? ユダヤ人と近代美術 (光文社新書) 作者:圀府寺 司 光文社 Amazon 圀府寺司『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書)だが、一言では説明しづらい本である。 これは「ユダヤ人に特有の美術」の本ではない。この本によればユダヤ人に特有…
かつて、映画は「動くこと」そのものだった 映画とは何か: フランス映画思想史 (筑摩選書) 作者:三浦 哲哉 筑摩書房 Amazon 三浦哲哉の『映画とは何か フランス映画思想史』(筑摩選書)は、タイトルが示すとおり、映画と言ってもフランス映画の本である。 …
批評を読む楽しみ 英米文学や表象文化論を専門とする高村峰生による、英米の小説・映画・音楽についての批評集がこの『接続された身体のメランコリー 〈フェイク〉と〈喪失〉の21世紀英米文化』(青土社)だ。 接続された身体のメランコリー: 〈フェイク〉…
この本がベンヤミン入門に最適だと思う理由 私はヴァルター・ベンヤミンがとても好きなのだが、何せ読みづらい文章を書く人なので、なかなか人に勧めづらい。 入門書もあまり出ていない。 そんな中で数少ない、「これを最初に読めばいいんじゃないかな……」と…
西洋美術の歴史に潜在するレイシズム 岡田温司は私が最もたくさん読んでいる著者の一人だ。著書が多すぎてぜんぜん追いつけないのだが。 この著者の仕事には大きく分けて、イタリア現代思想の紹介と、美術史・芸術批評のふたつのカテゴリーがある。(もちろ…