もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

最近の谷崎賞と泉鏡花賞と川端賞の受賞作をまとめてみた(2010年~)

三大・渋い文学賞(個人的印象です) 芥川・直木以外にも文学賞はいろいろ(本当にいろいろ……)ありますが、谷崎潤一郎賞・泉鏡花文学賞・川端康成文学賞の三つは、個人的に「あまり目立たない賞だけど、いつも面白そうな小説が受賞しているなあ」という渋い…

千葉雅也『現代思想入門』 圧倒的読みやすさの工夫と、その切実さ

ついに出た、現代思想の入門、その決定版 千葉雅也の『勉強の哲学』が出てからしばらくの間、私はいわゆる「現代思想」の本を知人に勧める際、この本を挙げていた。「勉強」についてとても平易に、読みやすく書かれたこの本は、実のところ、「現代思想」のす…

『ゴールデンカムイ』 透明な国家と機械化した二階堂浩平

『ゴールデンカムイ』に描かれなかったもの 以前私は下記の記事で、野田サトル『ゴールデンカムイ』には「世界の全体」が描いてある、と書いた。それは「例えば「愛」と「欲望」と「暴力/権力」と「生命」と「歴史」とか」の、世界を構成する諸要素が、物語…

グレアム・ハーマン『四方対象』で体験する、存在論の冒険

実在論ブームと、オブジェクト指向存在論 日本では2010年代の後半あたりから紹介され、一部でちょっとしたブームとなっていた哲学のジャンルが「実在論」である。「事物が存在する」というのはどういうことか? 我々が「存在する」と思っているものは本当に…

YOMUSHIKA MAGAZINE vol.2 SEPTEMBER 2022 特集:無機的なもの

一九七二年十一月のある日、シカゴ在住の写真家・デザイナーであるネイサン・ラーナーはウェスト・ウェブスター大通り八五一番地に行き、自分の借家人ヘンリー・ダーガーが四十年にわたって住んでいた部屋の鍵を開けた。数日前に部屋を出て老人ホームに移っ…

佐藤亜紀『吸血鬼』 われらの凡庸さという怪物

英雄的でない「歴史」について書くということ 入手困難だった佐藤亜紀の傑作、『吸血鬼』が待望の文庫化である。私が読んだ佐藤亜紀作品の中では一番好きな作品なのでとても嬉しい。ぜひ多くの人に読んでもらいたい。 吸血鬼 (角川文庫) 作者:佐藤 亜紀 KADO…

奈落の新刊チェック 2022年8月 日本文学・海外文学・現代思想・歴史・プレBL・非暴力・ポスト資本主義・アフロフューチャリズムほか

さてさて暦ももう9月、夏も終わりでいよいよ読書の秋に突入しつつありますが、新刊攻勢はとどまるところを知らず、欲しいものリストだけが膨張し続ける日々。しかし毎月やっていると本当に日本の出版文化はすごいなと思うわけですが、みんなキツい中でやって…