もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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2021-01-01から1年間の記事一覧

台湾日記:ビルの谷間の夜市と雞肉飯

台湾と言えば夜市が有名だが、夜市もいろいろある。台北に住み始めて間もない頃、仮住まいの周辺を徘徊しているうちに、ひとつの小さな夜市を見つけた。 その周辺を私はすでに何度も何度も通り過ぎていたのだが、道を一本曲がったらビル街の間に夜市があるな…

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』 ミステリ小説のように読める哲学、そしてフェアプレイ感

私の哲学との出会い 國分功一郎の『暇と退屈の倫理学』が、10年の時を経ての文庫化である。この機会にみんな買ってほしい。最初は2011年に朝日出版社から、次に増補新版が2015年に太田出版から出ている。このご時世に、哲学の本が10年で3バージョンも出ると…

映画「シャン・チー」でケイティがシャン・チーの名前をなかなか発音できないシーンの解説

中国語の発音は難しいぞ 「シャン・チー テン・リングスの伝説」は初めてアジア系ヒーローが主人公となったMCU映画なわけだが、特に印象的だったのが、主人公シャン・チーの親友ケイティがなかなかシャン・チーの名前を発音できないシーンだ。私も中国語を勉…

ベンヤミン入門におすすめの文庫はこれだ!多木浩二『「複製技術時代の芸術作品」精読』

この本がベンヤミン入門に最適だと思う理由 私はヴァルター・ベンヤミンがとても好きなのだが、何せ読みづらい文章を書く人なので、なかなか人に勧めづらい。 入門書もあまり出ていない。 そんな中で数少ない、「これを最初に読めばいいんじゃないかな……」と…

『ひらいて』ほか、綿矢りさのバキッとした文体が好き

祝・『ひらいて』映画化 (※注意)いきなり中盤のネタバレあり。 綿矢りさの『ひらいて』(新潮文庫)がいつの間にか映画化していた。 綿矢りさは『インストール』からわりと読んでるけど、『ひらいて』は一番好きかもしれない。主人公の女子高校生が、同じ…

アガンベンのスリリングな政治哲学を読もう! 「ホモ・サケル」とは何か

大人気!ジョルジョ・アガンベン イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンはいま最も邦訳がたくさん出ている海外の哲学者の一人だと思うが、最近また一冊入門書が出たので紹介しよう。 最近絶好調な感じがする講談社選書メチエから出た『アガンベン《ホモ・…

台湾日記:中山國小近くの八方雲集、そして星巴克

台北での最初の数か月間、私は一人で中山國小(チョンシャングオシャオ)近くのサービスアパートメントに滞在していた。中山國小というのは中山小学校という意味で、東西に伸びる民権東路(ミンチェンドンルー)と南北に伸びる新生北路(シンシェンベイルー…

佐藤亜紀『ミノタウロス』 容赦のない「歴史」の手触り、そして機関銃付き馬車。

祝・復刊!佐藤亜紀『ミノタウロス』 ミノタウロス (角川文庫) 作者:佐藤 亜紀 KADOKAWA Amazon 長らく品切れ状態だった佐藤亜紀『ミノタウロス』が、角川文庫から復刊された。めでたい。『スウィングしなけりゃ意味がない』が出て以来、入手困難だった佐藤…

『ゴールデンカムイ』には「世界の全体」と、「映画のファンタスム」が描いてある。

「全部ある漫画」 別にこんなところで紹介しなくてもだいたいみんなもう読んでると思うのだが、野田サトル『ゴールデンカムイ』(集英社・ヤングジャンプコミックス)は本当に面白い漫画ですよね。 私はおそらくアニメ化記念の100話無料公開の時に読み始めた…

岡田温司『西洋美術とレイシズム』ほか 芸術は政治でしかありえない

西洋美術の歴史に潜在するレイシズム 岡田温司は私が最もたくさん読んでいる著者の一人だ。著書が多すぎてぜんぜん追いつけないのだが。 この著者の仕事には大きく分けて、イタリア現代思想の紹介と、美術史・芸術批評のふたつのカテゴリーがある。(もちろ…

ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』 緻密に構成された不確かさ。

国書刊行会「未来の文学」シリーズの完結を記念して、ジーン・ウルフの謎めいた傑作『ケルベロス第五の首』を紹介します。

本のブログはじめます。

こんにちは、こうすけXです。 今までに読んだ本や最近読んだ本の感想などをアウトプットしようと思い、ブログを始めることにしました。 漫画、SF、日本文学、海外文学、現代思想、哲学、批評、歴史などが中心になると思います。 映画やその他のジャンルのこ…