2024-01-01から1年間の記事一覧
あっという間に師走となりまして、ということは当ブログも開設3周年ということになりました。みなさま日頃のご愛顧ありがとうございます。だんだん更新頻度は減っておりますが、今後も無理のない範囲で細々と続けていければと思っております。引き続きよろし…
台湾ニューシネマを代表する監督による青春映画 Asian Film Archiveより シンガポールのNGO「Asian Film Archive」主催のエドワード・ヤン映画祭にて、1996年の映画『カップルズ(原題:Mahjong)』を見た。 エドワード・ヤンは、1980年代から始まったいわゆ…
斜線堂有紀の初めてのSF短編集 回樹 作者:斜線堂 有紀 早川書房 Amazon 今回紹介する『回樹』は、2023年に刊行された斜線堂有紀の初のSF短編集。 もともとミステリや恋愛小説の分野で知られていた作者だが、アンソロジー等にしばしばSF短編を寄せることがあ…
国際情勢が息つく暇もない昨今ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。世の中が落ち着かなくなればなるほどSNS上に拙速な言葉が飛び交うのはもはや避けがたい世界の有様ですが、そんな時ほど書物に蓄えられた思考に触れ、言葉の減速を図るべきかと思います。も…
「常ならぬ相」をテーマに編まれた作品集 川端康成異相短篇集 (中公文庫 か 30-7) 作者:川端 康成,高原 英理 中央公論新社 Amazon 収録作品:心中/白い満月/地獄/故郷/離合/冬の曲/朝雲/死体紹介人/蛇/犬/赤い喪服/毛眼鏡の歌/弓浦市/めずらしい人/無言/たま…
ようやく暑さも和らいできたという噂が海外にも聞こえてきておりますがいかがお過ごしでしょうか。世の中が落ち着かないまま政党の党首も変わり次は総選挙と慌ただしい日々ですが、たまには本を読んだりすると目先が変わっていいと思います。というわけで今…
私事で恐縮ですが…… なぜ「権力」を描いたSFが多いのか 「権力」とは似て非なる、「権威」というテーマ 創作紹介 関連ブックガイド 私事で恐縮ですが…… Christ Church Melaka このたび、日本SF作家クラブと株式会社ピクシブが主催するSFコンテスト、「日本SF…
メフィスト賞出身作家による、本草学者と見習い同心のバディ・ミステリ 最強の毒 本草学者の事件帖 (角川文庫) 作者:汀 こるもの KADOKAWA Amazon 今回紹介する『最強の毒』は、近年新刊を続々と刊行している、異色のメフィスト賞出身作家・汀こるものによる…
そろそろ酷暑も和らいできたかと思いますがみなさまいかがお過ごしでしょうか。SNSでは今日もいろんな話題が高速で展開されておりますが、本を読むことでより「遅い」言葉をじっくり摂取することも大事かと思われます。レッツ・ゲット・遅れ。というわけで気…
人々が助け合って生きてゆくという思想 アナキズム入門 (ちくま新書) 作者:森元斎 筑摩書房 Amazon 森元斎『アナキズム入門』は、2017年に刊行されたちくま新書。著者はアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドの研究を専門とし、グレアム・ハーマンの翻訳を手…
幻覚に襲われる東京と、眠り続ける少女 バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA) 作者:津原 泰水 早川書房 Amazon 今回は、私にとってのベストSF小説のひとつを紹介したい。津原泰水の『バレエ・メカニック』だ。とはいうものの、実はこの小説を紹介する自信…
いよいよ夏本番となりましたが、みなさま日傘は利用されておりますでしょうか。あるとないとでは大違いですのでぜひご利用くださいませ。そして世界と人生の苛酷な日差しから身を守るためにはやっぱり読書ですよね。(無理矢理) というわけで7月刊行の面白…
理解を超えたものの魅力 暗黒の形而上学:触れられない世界の哲学 作者:飯盛 元章 青土社 Amazon 『暗黒の形而上学 触れられない世界の哲学』は、2020年に哲学者ホワイトヘッドの研究書『連続と断絶──ホワイトヘッドの哲学』でデビューした飯盛元章の2冊目の…
マイノリティの経験を反映したインディーゲームの世界 フェミニスト、ゲームやってる 作者:近藤銀河 晶文社 Amazon 近藤銀河『フェミニスト、ゲームやってる』はウェブメディア「Wezzy」での連載をまとめたもので、これまで様々なメディアや書籍に寄稿してき…
そろそろ日本は暑くなってきたようですがいかがお過ごしでしょうか。熱中症対策にはやっぱり涼しい場所での読書が一番ですよね。『百年の孤独』も文庫化したし…… しかし読書に熱中しすぎて水分補給を忘れるなどの危険もありますのでくれぐれもご注意ください…
金馬奨四冠映画の、気になる「打包」シーン oldfox11.com 現在公開中(2024年6月)の台湾映画『オールド・フォックス 11歳の選択』は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の助監督を務めていた蕭雅全(シャオ・ヤーチュエン)が監督の、2023年の金馬奨(台湾の代…
世界を変えた電信の発明と普及のドキュメント ヴィクトリア朝時代のインターネット (ハヤカワ文庫NF) 作者:トム スタンデージ 早川書房 Amazon 英国のジャーナリスト・作家で、現在は「エコノミスト」誌の編集に携わるトム・スタンデージによる『ヴィクトリ…
ユートピア的な想像力を取り戻す 闇の精神史 (ハヤカワ新書) 作者:木澤 佐登志 早川書房 Amazon 木澤佐登志は、2019年に立て続けに刊行した著書『ダークウェブ・アンダーグラウンド』『ニック・ランドと新反動主義』によって注目を集めた気鋭の書き手だ。今…
こんにちは。日本はそろそろ夏の気配がしてきた頃合でしょうか。相も変わらず無数の新刊から面白そうなものをピックアップしているのですが、このリストを作る効用として、あまりの量ゆえに「読みたい本を全て読めないのが悲しい」みたいな感情が雲散霧消す…
ベンヤミンの歴史哲学 ベンヤミン・アンソロジー (河出文庫) 作者:ヴァルター・ベンヤミン 河出書房新社 Amazon ヴァルター・ベンヤミンには未完成のまま残された文章が多くある。それはユダヤ人である彼がナチスに追われドイツを脱出せざるを得ず、そして亡…
架空のキャラクターを演じるデヴィッド・ボウイ ジギー・スターダスト アーティスト:デヴィッド・ボウイ ワーナーミュージックジャパン Amazon 以前、いわゆる名盤と呼ばれるような、ロックやポップスの歴史的に有名なアルバムをひととおり聴いてみた時期があ…
楽しいゴールデンウィークももう終わりですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。本は読めるコンディションの時とそうでない時がありますが、新刊は無情に刊行され続け、ちょっと待ってくれという気もしますがまあ後から読んでも特に差し支えはないかと思われ…
MCUとキャプテン・アメリカについてまとめてみる マーベル公式サイトより なんとなく、どこかの時点で自分にとってのMCUについてまとめておこうと思っていて、しかしずっと継続して作品が出てくるのでまとめるタイミングが難しかったのだが、最近自分の中で…
一味違うソンタグの入門書 スーザン・ソンタグ 「脆さ」にあらがう思想 (集英社新書) 作者:波戸岡 景太 集英社 Amazon 波戸岡景太『スーザン・ソンタグ 「脆さ」にあらがう思想』は、ソンタグの著書『ラディカルな意志のスタイルズ』の翻訳も手がけた著者に…
「未来の文学」シリーズの定番短編集 以前このブログでジーン・ウルフの傑作SF『ケルベロス第五の首』(およびそれを含む国書刊行会「未来の文学」シリーズ)を紹介したことがあるが、同シリーズから出ている、同じくジーン・ウルフの短編集『デス博士の島そ…
暑くなったり寒くなったりしつつ早いもので世の中は新年度ですが、まだまだ旧年度の新刊が睨みを利かせています。年度の切れ目など、人類そして宇宙の歴史の前では何の意味も持たぬ区切りにすぎない……人類の営みとは……などと紋切り型の詠嘆をたわむれに捻り…
ギリシア悲劇への入門に最適の新書 ギリシア悲劇 人間の深奥を見る (中公新書) 作者:丹下和彦 中央公論新社 Amazon 丹下和彦『ギリシア悲劇 人間の深奥を見る』は、2006年刊行の中公新書。著者は1942年生まれで古典学を専門とし、多くのギリシア悲劇を翻訳し…
『オリエンタリズム』の批評家サイードについて 中井亜佐子は英文学、特にコンラッドをはじめとしたモダニズム期のものを専門とする研究者で、以前も当ブログで著書を紹介したことがある。 pikabia.hatenablog.com 今回紹介するのは、上記『〈わたしたち〉の…
フィッツジェラルドの短編集が多い! 1.村上春樹訳以外のもの 2.村上春樹訳のもの 収録作一覧表 フィッツジェラルドの短編集が多い! 『グレート・ギャツビー』で知られる作家スコット・フィッツジェラルドについては弊ブログでも二度紹介し、どちらの記…
そろそろ暖かくなってきたりそうでもなかったりする今日この頃ですがいかがお過ごしでしょうか。中華圏でも旧正月が終わってようやく新年が始まっております。最近は出版社や書店がニュースの主役になることもなんだか多く、それぞれの役割がいろんな方向か…