2024-01-01から1年間の記事一覧
一味違うソンタグの入門書 スーザン・ソンタグ 「脆さ」にあらがう思想 (集英社新書) 作者:波戸岡 景太 集英社 Amazon 波戸岡景太『スーザン・ソンタグ 「脆さ」にあらがう思想』は、ソンタグの著書『ラディカルな意志のスタイルズ』の翻訳も手がけた著者に…
「未来の文学」シリーズの定番短編集 以前このブログでジーン・ウルフの傑作SF『ケルベロス第五の首』(およびそれを含む国書刊行会「未来の文学」シリーズ)を紹介したことがあるが、同シリーズから出ている、同じくジーン・ウルフの短編集『デス博士の島そ…
暑くなったり寒くなったりしつつ早いもので世の中は新年度ですが、まだまだ旧年度の新刊が睨みを利かせています。年度の切れ目など、人類そして宇宙の歴史の前では何の意味も持たぬ区切りにすぎない……人類の営みとは……などと紋切り型の詠嘆をたわむれに捻り…
ギリシア悲劇への入門に最適の新書 ギリシア悲劇 人間の深奥を見る (中公新書) 作者:丹下和彦 中央公論新社 Amazon 丹下和彦『ギリシア悲劇 人間の深奥を見る』は、2006年刊行の中公新書。著者は1942年生まれで古典学を専門とし、多くのギリシア悲劇を翻訳し…
『オリエンタリズム』の批評家サイードについて 中井亜佐子は英文学、特にコンラッドをはじめとしたモダニズム期のものを専門とする研究者で、以前も当ブログで著書を紹介したことがある。 pikabia.hatenablog.com 今回紹介するのは、上記『〈わたしたち〉の…
フィッツジェラルドの短編集が多い! 1.村上春樹訳以外のもの 2.村上春樹訳のもの 収録作一覧表 フィッツジェラルドの短編集が多い! 『グレート・ギャツビー』で知られる作家スコット・フィッツジェラルドについては弊ブログでも二度紹介し、どちらの記…
そろそろ暖かくなってきたりそうでもなかったりする今日この頃ですがいかがお過ごしでしょうか。中華圏でも旧正月が終わってようやく新年が始まっております。最近は出版社や書店がニュースの主役になることもなんだか多く、それぞれの役割がいろんな方向か…
70年代の韓国を描いたベストセラー チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』を始めとした数々の韓国文学の翻訳により、今ではすっかり日本を代表する韓国文学の紹介者として知られている斎藤真理子だが、今回紹介するのはその訳業の原点になったという小…
歌人でもある新鋭の芥川賞候補作 Blue (集英社文芸単行本) 作者:川野芽生 集英社 Amazon 川野芽生『Blue』は雑誌『すばる』2023年8月号「トランスジェンダーの物語」特集における発表当初から話題となり、芥川賞候補ともなった小説だが、作者のキャリア…
韓国の国際ブッカー賞作家による、断章形式の小説 すべての、白いものたちの (河出文庫) 作者:ハン・ガン 河出書房新社 Amazon 1970年生まれの韓国の小説家ハン・ガン(韓江)は、2005年の代表作『菜食主義者』によって、韓国で最も権威ある文学賞と言われる…
私事で恐縮ですが…… SFのテーマとしての植民地 シンガポールで見る007の衝撃 創作紹介 関連ブックガイド 私事で恐縮ですが…… Winsland House II 今回は私事と雑談なんですが、実は一昨年あたりからブログのほかに趣味でSF小説を書いておりまして、WEBメディ…
さて月も明けまして恒例の新刊チェックです。この記事のために見かけた書名を控えておくのですが、いざこれを書こうとすると発売が延期になっていることもしばしば。みなさま苦労して本を刊行されているのかと思います。面白い本をどんどん出してくれる著者…
著名憲法学者による、憲法と法思想の入門書 増補新版 法とは何か 法思想史入門 河出ブックス 作者:長谷部恭男 河出書房新社 Amazon 今回紹介する『法とは何か 法思想史入門』は、法学者である長谷部恭男による法学・法思想の入門書である。長谷部恭男は1956…
表象文化論の大家が、イタリア映画の巨匠たちを読み解く イタリア芸術のプリズム: 画家と作家と監督たち 作者:温司, 岡田 平凡社 Amazon 『イタリア芸術のプリズム 画家と作家と監督たち』は、このブログでもすでに何冊か著書を紹介している、美術史・表象文…
1910年ソウル生まれの作家の新訳作品集 翼~李箱作品集~ (光文社古典新訳文庫) 作者:李 箱 光文社 Amazon 李箱(イ・サン)は1910年、日本統治下の朝鮮に生まれ、27歳の若さで世を去った詩人/作家だ。ソウル(当時の名は京城)に生まれ、日本語で教育を受…
あけましておめでとうございます。年が明けて当ブログもいよいよ3年目に突入したわけですが、一体いつまで続けるつもりなのでしょうか。誰に頼まれたわけでもない更新ですが、自分が楽しんでいるうちは続けていこうかと思います。一番読んでいるのが自分とい…