フィッツジェラルドの短編集が多い!
『グレート・ギャツビー』で知られる作家スコット・フィッツジェラルドについては弊ブログでも二度紹介し、どちらの記事も非常に多くの方に読んでいただいております。
戦間期の好景気に沸いた狂乱の20年代とその後に来る大恐慌の時代を生きた、「ロスト・ジェネレーション」を象徴する作家、さらにはアメリカ文学を代表する作家とまで言われるフィッツジェラルドですから、読者が多いのも不思議はありません。
ところでいざ『グレート・ギャツビー』以外の小説、それも短編を読んでみようかなと思った際に、古典的な文豪の常ですが、各社からいろんな短編集が出ていて困ってしまうのではないでしょうか。
というか例によって私が困っておりますので、今回は現在流通していると思われる短編集の収録作をまとめてみました。
まずは村上春樹訳以外のものを刊行順に、その後で点数の多い村上春樹訳のものをまとめてあります。
記事の末尾にそれぞれの本の収録作を一覧にした表もありますので、スクロールしてご覧ください。
また野崎孝・小川高義・村上春樹の訳文の違いについてはこちらの記事で比較しておりますので、ぜひ参考にしてください。当ブログで最も読まれている記事です。
フィッツジェラルドの小説の内容についてはこちらの記事をどうぞ。
1.村上春樹訳以外のもの
まずは定番の新潮文庫、そして定番の野崎訳です。こちらは「フィツジェラルド」表記。
収録作:氷の宮殿 冬の夢 金持の御曹子 乗継ぎのための三時間 泳ぐ人たち バビロン再訪
岩波文庫 『フィッツジェラルド短篇集』 佐伯泰樹訳 1992
こちらも老舗の岩波文庫。同じく定番と言えるでしょう。
収録作:リッツ・ホテルほどもある超特大のダイヤモンド メイ・デイ 冬の夢 金持ち階級の青年 バビロン再訪 狂った日曜日
光文社古典新訳文庫 『若者はみな悲しい』 小川高義訳 2008
こちらは光文社古典新訳文庫。読みやすさを重視した翻訳となっています。
収録作:お坊ちゃん 冬の夢 子どもパーティ 赦免 ラッグズ・マーティン=ジョーンズとイギ○スの皇○子 調停人 温血と冷血 「常識」 グレッチェンのひと眠り
角川文庫 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 永山篤一訳 2009
こちらは角川文庫で、デヴィッド・フィンチャーによる映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』に合わせて編纂された短編集。他の短編集とほとんど重複していないレア作品が集まっています。ちなみにこれも「フィツジェラルド」表記。
収録作:ベンジャミン・バトン レイモンドの謎 モコモコの朝 最後の美女 ダンス・パーティの惨劇 異邦人 家具工房の外で
2.村上春樹訳のもの
ここから村上春樹訳です。
まず以下三点は、中央公論新社の「村上春樹翻訳ライブラリー」シリーズ。新書サイズで、エッセイやインタビューなども収録されています。
『マイ・ロスト・シティー』 単行本1981/ライブラリー2006
収録作:残り火 氷の宮殿 哀しみの孔雀 失われた三時間 アルコールの中で マイ・ロスト・シティー F・スコット・フィッツジェラルド インタビュー フィッツジェラルド体験(村上春樹)
『バビロンに帰る』 単行本1999/ライブラリー2008
収録作:ジェリービーン カットグラスの鉢 結婚パーティー バビロンに帰る 新緑 スコット・フィッツジェラルドの幻影(村上春樹) スコット・フィッツジェラルド作品集のための序文(マルコム・カウリー)
『冬の夢』 単行本2009/ライブラリー2011
収録作:冬の夢 メイデー 罪の赦し リッツくらい大きなダイアモンド ベイビー・パーティー
中公文庫 『フィッツジェラルド10 傑作選』 2023
こちらは中公文庫から最近出たもので、村上春樹がこれまで訳した短編の中から10本を選んだベストセレクションです。定番作も多く収録されていますし、春樹訳を一冊だけ買うならこれがいいのではないでしょうか。
収録作:残り火 氷の宮殿 リッチ・ボーイ(金持の青年) カットグラスの鉢 バビロンに帰る 冬の夢 メイデー クレイジー・サンデー 風の中の家族 エッセイ3部作(壊れる 貼り合わせる 取り扱い注意)
『ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集』 2019
こちらは単行本。後期の短編とエッセイを集めてあります。
収録作:短篇小説(異国の旅人 ひとの犯す過ち クレイジー・サンデー 風の中の家族 ある作家の午後 アルコールに溺れて フィネガンの借金 失われた十年) エッセイ(私の失われた都市 壊れる 貼り合わせる 取り扱い注意 若き日の成功)
収録作一覧表
タイトルの訳し方がそれぞれ違うので、原題でまとめてあります。拡大してご覧ください。(角川文庫『ベンジャミン・バトン』は他との重複が一作のみなので除外)
「冬の夢」「金持ちの御曹司」「バビロン再訪」が三大定番と言えそうです。
以上、フィッツジェラルド短編集の収録作紹介でした。
フィッツジェラルドは短編も大変魅力的ですので、ぜひ読んでみてください。