もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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映画

岡田温司『イタリア芸術のプリズム』 巨匠たちの映画に結実する、イタリアの芸術・宗教・政治

表象文化論の大家が、イタリア映画の巨匠たちを読み解く イタリア芸術のプリズム: 画家と作家と監督たち 作者:温司, 岡田 平凡社 Amazon 『イタリア芸術のプリズム 画家と作家と監督たち』は、このブログでもすでに何冊か著書を紹介している、美術史・表象文…

『シン・仮面ライダー』が表現する、特撮のヌーヴェル・ヴァーグ的異物感

生々しい手触りを目指す、庵野秀明のヌーヴェル・ヴァーグ映画 シン・仮面ライダー 池松壮亮 Amazon 庵野秀明監督『シン・仮面ライダー』がようやく海外でも公開されたので、遅ればせながら劇場で見ることができた。(すでにAmazonプライムビデオで配信が始…

シャンタル・アケルマン『オルメイヤーの阿房宮』 コンラッドのデビュー作を映画化

再評価の進む監督による、植民地小説の映画化 オルメイヤーの阿房宮(字幕版) スタニスラス・メラール Amazon 先日、ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』を紹介する記事(こちら)を書いている際、コンラッドの最初の小説である『オルメイヤーの阿房宮』が2010…

『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』は華麗な異色のドキュメンタリー

『ムーンエイジ・デイドリーム』ってどんな映画? dbmd.jp いよいよ日本でも公開となるデヴィッド・ボウイのドキュメンタリー映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』である。吉井和哉による「上映わずか3分で大号泣」というコメントがキャッ…

ティム・バートン監督『ウェンズデー』 モノクロームなゴシックへの帰還

90年代バートン映画ファンの懐古的な語りをお届けします。 さて『ウェンズデー』です。説明不要な気もするものの一応説明すると、往年の大ヒット・ゴシック・コメディー映画『アダムス・ファミリー』シリーズ(原作は漫画らしい)の登場人物ウェンズデーを主…

ゴダール『軽蔑』つれづれ感想 あるいはヌーヴェルヴァーグ映画の楽しみ

ふつうの映画に飽きたらヌーヴェル・ヴァーグ映画を見よう 急にジャン=リュック・ゴダールの映画が観たくなり、ブリジッド・バルドーが出ている『軽蔑』を Amazonプライムビデオの配信で見た(初見)。 Amazon プライムの古いフランス映画などは以前に比べ…

『シン・ウルトラマン』を見て振り返る、「特撮」のイメージの秘密

自分にとって「ウルトラマン」とは何だったのか 遅ればせながら庵野秀明総監修・樋口真嗣監督『シン・ウルトラマン』を劇場で見ることができた。 わりと多くの人がそうだったのではないかと思うのだが、『シン・ウルトラマン』を見るという体験は、自分にと…

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『ブレードランナー2049』の限りのない寂しさ

名作の続編がまた名作だったという嬉しい驚き ブレードランナー 2049 ハリソン・フォード Amazon リドリー・スコット監督『ブレードランナー』のファンであればあるほど、続編製作を知った時には「ええ~?」と感じた人も多かったのではないかと思う。私もそ…

『ザ・バットマン』はゴシック・クラシックになり損ねたのか?

THE BATMAN-ザ・バットマン-(字幕版) ロバート・パティンソン Amazon 映画のネタバレを含みます! マット・リーヴス監督「ザ・バットマン」は、一見本格的なゴシック・ノワールとして始まる。 ゴッサムシティはかつてないほどにゴシックな建築の立ち並ぶ都…

映画ファンは「コナン映画」をぜひ見てみてほしい 初心者が語る、王道娯楽スパイアクションとしての『名探偵コナン』

あなたはコナン映画を見たことがあるか? www.conan-movie.jp 新作映画『ハロウィンの花嫁』が公開する名探偵コナンなわけだが、これを読んでいるみなさんは、最近のコナン映画を見たことがあるだろうか? もし見たことがない場合は、配信でもなんでもいいの…

ロベール・ブレッソン監督『たぶん悪魔が』 静謐で官能的な、運命的映像

ブレッソン"幻の傑作" ロベール・ブレッソン監督の1977年の映画『たぶん悪魔が』を観た。日本初公開だそうだ。 一見するとリアルな人々と街の姿を捉えたかに見える映画だが、その実、この映画に映っている光景は決して現実的なものではない。あらゆる登場人…

不思議な映画『ダークナイトライジング』は、ノーランのゴシックおとぎ話だ。

好きにならずにはいられない、『ダークナイトライジング』 ※この記事は全部ネタバレです。 バットマンの新作が公開されているわけだが、まだ見れてないので今回は私の好きなバットマン映画を紹介しよう。 傑作かどうかと言われるとよくわからないものの、妙…

黒沢清『スパイの妻』「カメラに映っていない場所では、何が起きていてもおかしくない」という緊張感。

スパイの妻<劇場版> 蒼井優 Amazon 黒沢清は私が一番好きな映画監督の一人だが、今のところ最新作である『スパイの妻』は中でも特にお勧めしやすいもののひとつかもしれない。 (※ネタバレは序盤まで) 舞台は1940年の神戸。太平洋戦争の開戦が徐々に近づ…

映画「シャン・チー」でケイティがシャン・チーの名前をなかなか発音できないシーンの解説

中国語の発音は難しいぞ 「シャン・チー テン・リングスの伝説」は初めてアジア系ヒーローが主人公となったMCU映画なわけだが、特に印象的だったのが、主人公シャン・チーの親友ケイティがなかなかシャン・チーの名前を発音できないシーンだ。私も中国語を勉…