もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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SF

2.5次元ミュージカルとしての『ジギー・スターダスト』 架空のキャラクターとして歌うということ

架空のキャラクターを演じるデヴィッド・ボウイ ジギー・スターダスト アーティスト:デヴィッド・ボウイ ワーナーミュージックジャパン Amazon 以前、いわゆる名盤と呼ばれるような、ロックやポップスの歴史的に有名なアルバムをひととおり聴いてみた時期があ…

ジーン・ウルフ『デス博士の島その他の物語』 謎に満ちた語りと美しい文章に魅せられる技巧派SF短編集

「未来の文学」シリーズの定番短編集 以前このブログでジーン・ウルフの傑作SF『ケルベロス第五の首』(およびそれを含む国書刊行会「未来の文学」シリーズ)を紹介したことがあるが、同シリーズから出ている、同じくジーン・ウルフの短編集『デス博士の島そ…

SFと植民地 あるいはシンガポールで見る『カジノ・ロワイヤル』(自作宣伝です)

私事で恐縮ですが…… SFのテーマとしての植民地 シンガポールで見る007の衝撃 創作紹介 関連ブックガイド 私事で恐縮ですが…… Winsland House II 今回は私事と雑談なんですが、実は一昨年あたりからブログのほかに趣味でSF小説を書いておりまして、WEBメディ…

ウィリアム・ギブスン原作のSFドラマ『ペリフェラル ~接続された未来~』が面白い!

シーズン2がキャンセルされたけど見てほしい! youtu.be 『ペリフェラル ~接続された未来~』は、2014年に発表されたウィリアム・ギブスンの小説『The Peripheral』を原作とする、Amazon Prime Videoによる2022年のドラマシリーズだ。 シーズン1の全8話が配…

SFファンは「かぐやSFコンテスト」とオンラインSF誌「Kaguya Planet」に注目を!(あと自作宣伝)

私事で恐縮ですが…… 今回はいきなり私事で恐縮なのですが、尾崎滋流名義で「第3回かぐやSFコンテスト(テーマ:未来のスポーツ)」に応募した掌編が、選外佳作に選ばれました! 『夏の夕暮れ、タナトスの子供たち』というタイトルで、5分くらいで読めますの…

竹書房文庫のSFが気になる! 独自のセレクトとスタイリッシュなデザインで攻める新進SF文庫リスト

竹書房文庫のSFがやばい! SF専門の文庫レーベルと言えばハヤカワ文庫SFと創元SF文庫が二大巨頭ではありますが(あと河出とかちくまとか他の文庫レーベルからも面白いSFはたくさん出てますが)、近年は竹書房文庫のSFがどんどん存在感を増しており、気になっ…

クィアなSFが読みたい! 「クィアSF」というカテゴリーについて/創作SF小説のお知らせ

突然ですが…… 突然ですが創作SF小説を書いて投稿サイト「カクヨム」に投稿しました。少し前からSF小説を書いていたのですが、今回カクヨム公式企画である「カクヨム公式自主企画「百合小説」」に参加するべくユーザー登録したという次第です。 近未来のシン…

アニメ『デビルマン クライベイビー』 静かに研ぎ澄まされた激しさの表現

『デビルマン』原作への忠実さと現代的アレンジを両立したNETFLIXアニメ (中盤くらいまでのネタバレがあります) 湯浅政明監督・サイエンスSARU制作によるアニメ『デビルマン クライベイビー』は、2018年に配信されたネットフリックスオリジナル作品だ。 de…

ボルヘスの代表作『伝奇集』から、お勧めの短編を紹介します。

迷宮の作家・ボルヘスの代表的短編集からのお勧め短編5選 さてボルヘスです。前回、「ボルヘスの小説を読んでみたい場合、どの本を買えばいいのか?」というガイド記事を作成したところ、多くの方に読んでいただいております。どうもありがとうございます。 …

永野護『ファイブスター物語』は完結するのか問題 & そのジェンダー表象について

最近の『ファイブスター物語』を読んで考えたこと ファイブスター物語 17 (ニュータイプ100%コミックス) 作者:永野 護 KADOKAWA Amazon このほど永野護『ファイブスター物語』の第17巻が発売された。私も長年の読者なのでさっそく買い、数時間かけて読み、過…

YOMUSHIKA MAGAZINE vol.5 MARCH 2023 特集:怪物

きっかけはフライザだった。"フライザ"なのか"ラ・フライザ"なのかはいつも論議を呼ぶところで、年配の村医者たちや、称号付けをうけもつ長老たちを悩ませてきた。彼女は正常に見えた。──ほっそりした褐色の体、きれいな歯並み、広い鼻、真鍮色の目。生まれ…

YOMUSHIKA MAGAZINE vol.4 JANUARY 2023 特集:ニューウェーブ

ダダイストたちの挑発にまんまと乗せられた観客は、舞台からあふれでるナンセンスな言葉の洪水に腹を立てて、生卵やトマトや腐りかけたオレンジをダダイストめがけて投げつけたり、有名な女優のマルト・シュナル(ピカビアと一緒に見物に来ていた)にフラン…

『J.G.バラード短編全集』 短編小説に凝縮された、文明批判と滅びの魅惑

私の好きなバラードのSF短編 J.G.バラードことジェームズ・グレーアム・バラードは私が一番好きな作家のひとりだが、以前はその長編について紹介したので、今回は短編の話をしようと思う。バラードの長編と短編は、書かれている内容はかなりの部分共通してい…

飛浩隆『ラギッド・ガール』 緻密で官能的に描かれた、不可避の暴力についてのSF

「廃園の天使」シリーズの短編集(この本から読んでOK) 飛浩隆について書くのは難しい。飛浩隆を読むという体験をどのように書けばいいのか、ちょっとよくわからない。 飛浩隆の小説はSFである。そしてこのSFは、我々を無傷のままにはしておかない。我々は…

高山羽根子『オブジェクタム/如何様』 解けない謎、として描かれる世界

こういう小説が読みたかった 高山羽根子『オブジェクタム/如何様』は最高の作品集である。私はこれを読みながら何度も「うわーっ!最高だ!」と叫びたくなってしまい、とはいえ実際に叫ぶことはせず一人で拳を握りしめたり部屋をうろうろ歩き回ったりするに…

ボルヘスの小説はどれから読めばいい? 「迷宮の作家」ボルヘス文庫ガイド

ボルヘスの小説はこの文庫を買えばOK ボルヘスの小説はこの文庫を買えばOK ①代表的作品集『伝奇集』/『アレフ』 ②比較的読みやすい『砂の本』 ③異色作(でも小説としてはむしろオーソドックスな)『ブロディーの報告書』 ④「ボルヘス最後の短編集」『シェイ…

続々刊行!日本SFアンソロジー 近刊まとめ

SFアンソロジーの勢いがすごすぎて把握できないのでまとめた。 SFアンソロジー新月、Rikka Zine、『新しい世界を生きるための14のSF』、Genesisシリーズ、NOVAシリーズなどなど……SF読者であれば、近年のアンソロジー刊行の勢いに驚いている方は多いのではな…

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『ブレードランナー2049』の限りのない寂しさ

名作の続編がまた名作だったという嬉しい驚き ブレードランナー 2049 ハリソン・フォード Amazon リドリー・スコット監督『ブレードランナー』のファンであればあるほど、続編製作を知った時には「ええ~?」と感じた人も多かったのではないかと思う。私もそ…

最初にハマった小説がギブスン『ニューロマンサー』だった人間の末路

卵から孵って最初に見たのが『ニューロマンサー』 ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF) 作者:ウィリアム ギブスン 早川書房 Amazon 私はウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』が大好きというか、現在に至るまでに読んでいるSF、あるいは文学、あるいは…

『逆行の夏──ジョン・ヴァーリイ傑作選』で読む、ヴァーリイの煌びやかで繊細なSF

ジョン・ヴァーリイの短編「逆行の夏」を紹介します。 ジョン・ヴァーリイは70年代末から活動しているアメリカのSF作家で、私のとても好きな作家の一人だ。SFファン向けの説明をすると、だいたいニューウェーブとサイバーパンクの中間くらいの作風だと思う。…

藤野可織『ピエタとトランジ』 無敵の二人は変化に抵抗する

無敵の存在に関する小説 ピエタとトランジ <完全版> 作者:藤野可織 講談社 Amazon ピエタとトランジ (講談社文庫) 作者:藤野 可織 講談社 Amazon あなたはもう藤野可織『ピエタとトランジ<完全版>』(文庫版では『ピエタとトランジ』)を読んだだろうか…

ネトフリドラマ化原作、ニール・ゲイマン『サンドマン』を読んでみたら最高の現代ファンタジーだった

ニール・ゲイマンとは? ニール・ゲイマンという作家は英米と日本で知名度にかなり差のある作家だと思う。日本ではまだそんなに知られていない気がするが、英米では絶大な評価と人気を持っている作家という感じだ。SF・ファンタジーの分野から出発しつつ、現…

ムアコック「エルリック・サーガ」で出会う暗黒ファンタジーと葛藤するヒーロー

はじめてのダーク・ファンタジー メルニボネの皇子 作者:マイクル ムアコック 早川書房 Amazon フロム・ソフトウェアのエルデンリングが大人気なわけだが、ああいうダークな雰囲気のヒロイック・ファンタジーを見ると『エルリック・サーガ』を思い出す。 中…

J.G.バラードの不毛の癒し 『ミレニアム・ピープル』ほか

J.G.バラードは何も信じてないから信用できる イギリスのニュー・ウェーブSFを代表する作家とよく言われるジェームス・グレーアム・バラードことJ.G.バラードは私の一番好きな小説家の一人なのだが、どこが好きかと言われると説明しづらい。 SF作家ではある…

高山羽根子『暗闇にレンズ』を読んで震えあがった。

女性たちの偽史SF 高山羽根子という作家の名前はSF方面でちょくちょく目にしていて、読んでみたいなーと思っているうちに時は過ぎゆき(最近は少し油断するとすぐに5年くらい経つ)、そうこうしているうちに芥川賞を受賞し、前後してこの『暗闇にレンズ』(…

ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』 緻密に構成された不確かさ。

国書刊行会「未来の文学」シリーズの完結を記念して、ジーン・ウルフの謎めいた傑作『ケルベロス第五の首』を紹介します。