もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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続々刊行!日本SFアンソロジー 近刊まとめ

SFアンソロジーの勢いがすごすぎて把握できないのでまとめた。

 

SFアンソロジー新月、Rikka Zine、『新しい世界を生きるための14のSF』、Genesisシリーズ、NOVAシリーズなどなど……SF読者であれば、近年のアンソロジー刊行の勢いに驚いている方は多いのではないでしょうか。ここ数年、特に今年、面白そうなSFアンソロジーがどんどん刊行されており、すごい勢いを感じます。

かくいう私は、すでに勢いがすごすぎてわけが分からなくなって来ております。というわけで、メモがてらに最近刊行されたSFアンソロジーとその収録作をまとめてみました。(2018年以降に刊行されたものを掲載しています)

なお、実は海外SFのアンソロジーも多数刊行されており、そちらの勢いもすごいのですが、量が膨大になるのでひとまず今回は日本のSFに限定しております。

 

 

 

SFアンソロジー 新月

2022年刊行。

ウェブメディア「バゴプラ」が主催する「かぐやSFコンテスト」から生まれたアンソロジー新月」シリーズの第一弾。井上彼方編。

VG+ (バゴプラ) | We Love SF | VG+ (バゴプラ)

三方行成「詐欺と免疫」一階堂洋「偉業」千葉集「擬狐偽故」佐伯真洋「かいじゅうたちのゆくところ」葦沢かもめ「心、ガラス壜の中の君へ」勝山海百合「その笛みだりに吹くべからず」原里実「バベル」吉美駿一郎「盗まれた七五」佐々木倫「きつねのこんびに」白川小六「湿地」宗方涼「声に乗せて」大竹竜平「キョムくんと一緒」赤坂パトリシア「くいのないくに」淡中圏「冬の朝、出かける前に急いでセーターを着る話」もといもと「静かな隣人」苦草堅一「握り八光年」水町綜「星を打つ」枯木枕「私はあなたの光の馬」十三不塔「火と火と火」 正井「朧木果樹園の軌跡」武藤八葉「星はまだ旅の途中」巨大健造「新しいタロット」坂崎かおる「リトル・アーカイブス」稲田一声「人間が小説を書かなくなって」泡國桂「月の塔から飛び降りる」

 

Rikka Zine

2022年刊行。

橋本輝幸編により「世界のSFを日本へ、日本のSFを世界に。」をテーマに作られた新アンソロジーの創刊号で、日本語版と英語版が刊行される。
(この記事は日本SFのアンソロジーに限って集めていますが、この本は約半分が日本の作家によるものなので掲載しました)

Rikka Zine | A World SFF zine from Japan

千葉集「とりのこされて」レナン・ベルナルド 橋本輝幸訳「時間旅行者の宅配便」木海 橋本輝幸訳「保護区」 府屋綾「依然貨物」伊東黒雲「(折々の記・最終回)また会うための方法」鞍馬アリス「クリムゾン・フラワー」稲田一声「きずひとつないせみのぬけがら」阪井マチ「終点の港」根谷はやね「悪霊は何キログラムか?」ソハム・グハ 暴力と破滅の運び手 & 橋本輝幸 共訳「波の上の人生」灰都とおり「エリュシオン帰郷譚」ヴィトーリア・ヴォズニアク 橋本輝幸訳「残された者のために」笹帽子「幸福は三夜おくれて」日本橋和徳「天翔ける超巨大宇宙貨物船 アレステア・レナルズ論」ロドリーゴ・オルティズ・ヴィニョロ 白川眞訳「宛先不明の人々」ファン・モガ 廣岡孝弥訳「スウィート、ソルティ」ジウ・ユカリ・ムラカミ 橋本輝幸訳「海が私に手放させたもの」さんかく「新しい星の新しい人々の」もといもと「胡瓜より速く、茄子よりやおらに」

 

Genesisシリーズ

東京創元社による、書き下ろしSFアンソロジーのシリーズ。残念ながら5冊目の「この光が落ちないように」にて刊行終了とのこと。

2022年刊行

八島游舷「天駆せよ法勝寺[長編版]序章 応信せよ尊勝寺」宮澤伊織「ときときチャンネル#3【家の外なくしてみた】」菊石まれほ「この光が落ちないように」水見稜「星から来た宴」空木春宵「さよならも言えない」笹原千波「風になるにはまだ」

 

2021年刊。

小川一水「未明のシンビオシス」川野芽生「いつか明ける夜を」宮内悠介「1ヘクタールのフェイク・ファー」宮澤伊織「ときときチャンネル#2【時間飼ってみた】」小田雅久仁「ラムディアンズ・キューブ」高山羽根子「ほんとうの旅」鈴木力「SFの新時代へ」溝渕久美子「神の豚」松樹凛「射手座の香る夏」

 

2020年刊。

宮澤伊織「エレファントな宇宙」空木春宵「メタモルフォシスの龍」オキシタケヒコ「止まり木の暖簾」池澤春菜×下山吉光〔対談〕「プロの覚悟を届けたい――朗読という仕事」松崎有理「数学ぎらいの女子高生が異世界にきたら危険人物あつかいです」堀晃「循環」宮西建礼「されど星は流れる」折輝真透「蒼の上海」

 

2019年刊。

高島雄哉「配信世界のイデアたち」石川宗生「モンステリウム」空木春宵「地獄を縫い取る」中村融〔エッセイ〕「アンソロジーの極意」川野芽生「白昼夢通信」門田充宏「コーラルとロータス西崎憲〔エッセイ〕「アンソロジストの個人的事情」松崎有理「痩せたくないひとは読まないでください。」水見稜「調律師」

 

2018年刊行

久永実木彦「一万年の午後」高山羽根子「ビースト・ストランディング宮内悠介「ホテル・アースポート」加藤直之〔エッセイ〕「SFと絵」秋永真琴「ブラッド・ナイト・ノワール松崎有理「イヴの末裔たちの明日」吉田隆一〔エッセイ〕「SFと音楽」倉田タカシ「生首」宮澤伊織「草原のサンタ・ムエルテ」堀晃「10月2日を過ぎても」

 

NOVAシリーズ

河出文庫より刊行されている、大森望編による書き下ろしアンソロジーのシリーズ。2009年の「1」から2013年の「10」までは番号表記だったが、2019年以降は年号・季節による号数表記となった。不定期刊。

2021年刊。

高山羽根子「五輪丼」池澤春菜/堺三保原作「オービタル・クリスマス」柞刈湯葉「ルナティック・オン・ザ・ヒル新井素子「その神様は大腿骨を折ります」乾緑郎「勿忘草 機巧のイヴ 番外篇」高丘哲次「自由と気儘」坂永雄一無脊椎動物の想像力と創造性について」野崎まど「欺瞞」斧田小「おまえの知らなかった頃」酉島伝法「お務め」

 

2019年刊。

谷山浩子「夢見」高野史緒「浜辺の歌」高山羽根子「あざらしが丘」田中啓文「宇宙サメ戦争」麦原遼「無積の船」アマサワトキオ「赤羽二十四時」藤井太洋「破れたリンカーンの肖像」草野原々「いつでも、どこでも、永遠に。」津原泰水「戯曲中空のぶどう」

 

2019年刊。

新井素子「やおよろず神様承ります」小川哲「七十人の翻訳者たち」佐藤究「ジェリーウォーカー」柞刈湯葉「まず牛を球とします。」赤野工作「お前のこったからどうせそんなこったろうと思ったよ」小林泰三「クラリッサ殺し」高島雄哉「キャット・ポイント」片瀬二郎「お行儀ねこちゃん」宮部みゆき「母の法律」飛浩隆「流下の日」

 

創元SF文庫より刊行のもの

同時刊行された以下2冊はいずれも、東京創元社が主催する創元SF短編賞の正賞・優秀賞受賞者、佳作入選者による書き下ろしアンソロジー

2019年刊。

オキシタケヒコ「平林君と魚(いお)の裔(すえ)」宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」酉島伝法「黙唱」宮澤伊織「ときときチャンネル#1【宇宙飲んでみた】」高山羽根子「蜂蜜いりのハーブ茶」理山貞二「ディセロス」

 

2019年刊。

松崎有理「未来への脱獄」空木春宵「終景累ヶ辻」八島游舷「時は矢のように」石川宗生「ABC巡礼」久永実木彦「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」高島雄哉「ゴーストキャンディカテゴリー」門田充宏「Too Short Notice」

 

ハヤカワ文庫SFより刊行のもの

2022年刊。

伴名練によってセレクトされた新進SF作家のアンソロジー。原則として、SFの単著をまだ刊行していない作家の作品を集めたもの。

芦沢央「九月某日の誓い」天沢時生「ショッピング・エクスプロージョン」黒石迩守「くすんだ言語」琴柱遥「夜警」佐伯真洋「青い瞳がきこえるうちは」坂永雄一無脊椎動物の想像力と創造性について」斜線堂有紀「回樹」高橋文樹「あなたの空が見たくて」蜂本みさ「冬眠世代」宮西健礼「もしもぼくらが生まれていたら」麦原遼「それはいきなり繋がった」murashit「点対」八島游舷「Final Anchors」夜来風音「大江戸しんぐらりてい」

 

2022年刊。

後述の『ポストコロナのSF』に続く、日本SF作家クラブ編による書き下ろしSFアンソロジー第2弾。今回はオーウェル1984年』の100年後である2084年をテーマに競作。

福田和代「タイスケヒトリソラノナカ」青木和「Alisa」三方行成「自分の墓で泣いてください」逢坂冬馬「目覚めよ、眠れ」久永実木彦「男性撤廃」空木春宵「R__ R__」門田充宏「情動の棺」麦原遼「カーテン」竹田人造「見守りカメラ is watching you」安野貴博「フリーフォール」櫻木みわ「春、マザーレイクで」揚羽はな「The Plastic World」池澤春菜「祖母の揺籠」粕谷知世「黄金のさくらんぼ」十三不塔「至聖所」坂永雄一「移動遊園地の幽霊たち」斜線堂有紀BTTF葬送」高野史緒「未来への言葉」吉田親司「上弦の中獄」人間六度「星の恋バナ」草野原々「かえるのからだのかたち」春暮康一「混沌を掻き回す」倉田タカシ「火星のザッカーバーグ

 

2021年刊。

日本SF作家クラブ編による書き下ろしSFアンソロジー。「ポストコロナ」をテーマに19作家が競作。

小川哲「黄金の書物」伊野隆之オネストマスク」高山羽根子「透明な街のゲーム」柴田勝家「オンライン福男」若木未生「熱夏にもわたしたちは」柞刈湯葉「献身者たち」林譲治「仮面葬」菅浩江「砂場」津久井五月「粘膜の接触について」立原透耶「書物は歌う」飛浩隆「空の幽契」津原泰水「カタル、ハナル、キユ」藤井太洋木星風邪(ジョヴィアンフルゥ)」長谷敏司「愛しのダイアナ」天沢時生「ドストピア」吉上亮「後香(レトロネイザル) Retronasal scape」小川一水「受け継ぐちから」樋口恭介愛の夢北野勇作「不要不急の断片」

 

2021年刊。

樋口恭介編による、異常な論文を集めたアンソロジー。「SFマガジン」同名特集の増補書籍化。

円城塔決定論的自由意志利用改変攻撃について」青島もうじき「「空間把握能力の欠如による次元拡張レウム語の再解釈 およびその完全な言語的対称性」陸秋槎「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」松崎有理「掃除と掃除用具の人類史」草野原々「世界の真理を表す五枚のスライドとその解説、および注釈」木澤佐登志「INTERNET2」柞刈湯葉「裏アカシック・レコード高野史緒フランス革命最初期における大恐怖と緑の人々問題について」難波優輝「『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延──静寂機械・遺伝子地雷・多元宇宙モビリティ」久我宗綱「『アブデエル記』断片」柴田勝家「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」小川哲「SF作家の倒し方」飛浩隆「第一四五九五期〈異常SF創作講座〉最終課題講評」倉数茂樋口一葉の多声的エクリチュール──その方法と起源」保坂和志ベケット講解」大滝瓶太「ザムザの羽」麦原遼「虫→……」山新「オルガンのこと」酉島伝法「四海文書(注4)注解抄」笠井康平・樋口恭介「場所(Spaces)」鈴木一平+山本浩貴(いぬのせなか座)「無断と土」伴名練「解説──最後のレナディアン語通訳」神林長平「なぜいま私は解説(これ)を書いているのか」

 

2019年刊。

創刊以来初の3刷となった、「SFマガジン」百合特集の増補書籍化。

宮澤伊織「キミノスケープ」森田季節「四十九日恋文」今井哲也「ピロウトーク草野原々「幽世知能」伴名練彼岸花南木義隆「月と怪物」櫻木みわ・麦原遼「海の双翼」陸秋槎「色のない緑」小川一水「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」

 

講談社文庫タイガより刊行のもの

2022年刊。

講談社文庫タイガからもSFアンソロジーが登場。「“if”の世界」をテーマにした歴史改変SFの書き下ろしアンソロジー

石川宗生「うたう蜘蛛」宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」小川一水「大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)」伴名練 「二〇〇〇一周目のジャンヌ」

 

年刊ベストSFシリーズ

創元SF文庫より毎年刊行されていた、大森望日下三蔵による「年刊日本SF傑作選」と同様の企画を竹書房文庫が引き継ぐ形でスタートしたもの。こちらは大森望が単独でセレクトし、長さや発表形態を問わずに一年間に発表された作品の中から選出するとのこと。

2022年刊行。

酉島伝法「もふとん」吉羽善「或ルチュパカブラ溝渕久美子「神の豚」高木ケイ「進化し損ねた猿たち」津原泰水「カタル、ハナル、キユ」十三不塔「絶笑世界」円城塔「墓の書」鈴木一平+山本浩貴(いぬのせなか座)「無断と土」坂崎かおる「電信柱より」伴名練「百年文通」

 

2021年刊。

円城塔「この小説の誕生」柴田勝家「クランツマンの秘仏柞刈湯葉「人間たちの話」勝山海百合「あれは真珠というものかしら」牧野修「馬鹿な奴から死んでいく」斜線堂有紀「本の背骨が最後に残る」三方行成「どんでんを返却する」伴名練「全てのアイドルが老いない世界」麦原遼「それでもわたしは永遠に働きたい」藤野可織「いつかたったひとつの最高のかばんで」堀晃「循環」

 

2020年刊。

円城塔「歌束」岸本佐知子年金生活オキシタケヒコ「平林君と魚の裔」草上仁「トビンメの木陰」高山羽根子「あざらしが丘」片瀬二郎ミサイルマン石川宗生「恥辱」空木春宵「地獄を縫い取る」草野原々「断φ圧縮」陸秋槎「色のない緑」飛浩隆「鎭子」

 

 

 

以上、近年刊行されたものをなるべく網羅したつもりですが、もし他にもありましたらお知らせくださいませ。

 

 

 

※宣伝

2023年9月に開催された「第三回かぐやSFコンテスト」に投稿した短編SF小説が、選外佳作に選ばれました。近未来のパリを舞台としたクィア・スポーツSFです。

pikabia.hatenablog.com

こちらはカクヨム公式企画「百合小説」に投稿した、ポストコロニアル/熱帯クィアSF。

kakuyomu.jp

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