もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

有栖川有栖『鍵のかかった男』 死者の人生を探求する異色の本格ミステリ

火村英生が活躍する「作家アリスシリーズ」の異色作 さて、これから有栖川有栖の小説を紹介するにあたり、確認しておかなければならないことがある。 正直なところ、私はぜんぜんミステリを読まない。年に2~3冊読む、かも?という程度の読者である。 コナン…

『J.G.バラード短編全集』 短編小説に凝縮された、文明批判と滅びの魅惑

私の好きなバラードのSF短編 J.G.バラードことジェームズ・グレーアム・バラードは私が一番好きな作家のひとりだが、以前はその長編について紹介したので、今回は短編の話をしようと思う。バラードの長編と短編は、書かれている内容はかなりの部分共通してい…

100記事達成記念・記事別アクセスランキングベスト10

日頃のご愛顧ありがとうございます。 こんにちは。2021年12月に始めた当ブログも早いもので一周年となりまして、記事数も100本に達しました。いつも読んでいただき誠にありがとうございます。 というわけで、50本達成の際にもやった記事別アクセスランキング…

米田翼『生ける物質』 なぜ生命は生まれ、進化するのかを問うベルクソンの哲学

博士論文を書籍化した、著者のデビュー作 フランスの哲学者、アンリ・ベルクソンについては、ドゥルーズの本に名前がよく出てくるなあという程度の知識しか無かったのだが、今年はなぜか面白そうなベルクソン関連本が相次いで刊行されるという小ブームが起こ…

BUCK-TICK『SIX/NINE』『十三階は月光』 コンセプト・アルバムという贅沢

BUCK-TICKのお勧めコンセプト・アルバムを唐突に紹介する 音楽を聴く手段がすっかりサブスクに移行し、音楽雑誌を読むこともなくなると、近年はいよいよ音楽なんてその時なんとなく目についたものを聴くという感じになっている。(ちなみに私は音楽雑誌を読…

飛浩隆『ラギッド・ガール』 緻密で官能的に描かれた、不可避の暴力についてのSF

「廃園の天使」シリーズの短編集(この本から読んでOK) 飛浩隆について書くのは難しい。飛浩隆を読むという体験をどのように書けばいいのか、ちょっとよくわからない。 飛浩隆の小説はSFである。そしてこのSFは、我々を無傷のままにはしておかない。我々は…

奈落の新刊チェック 2022年11月 海外文学・SF・現代思想・グレイスイヤー・時ありて・探偵の不在・フランシスベーコン・贈与論ほか

さて今月も月初に昨月分の新刊チェックなわけですが、なんとこの新刊チェックも今回で12回目。というわけでこのブログもめでたく一周年というわけであります。自己満足でやっているブログではあるものの、閲覧数がゼロだったらあまりやる気が出ないと思われ…