2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧
ブレッソン"幻の傑作" ロベール・ブレッソン監督の1977年の映画『たぶん悪魔が』を観た。日本初公開だそうだ。 一見するとリアルな人々と街の姿を捉えたかに見える映画だが、その実、この映画に映っている光景は決して現実的なものではない。あらゆる登場人…
『変身』もいいけど…… カフカと言えばなんといっても『変身』が有名だが、私は他の短編の方が好きだ。 いや、もちろん『変身』は名作なのだが、なんというか……こう言ってしまっていいのかわからないのだが、その、わりと出オチっぽいというか…… こともあろう…
台北で仕事をしている間、南北に走る大安路(ダーアンルー)という細めの道の、東西に走る市民大道(スーミンダーダオ)と忠孝東路(ジョンシャオドンルー)という大通りに挟まれた区間で、よく昼食を食べた。住所で言うと大安路一段と呼ばれる地域のうち一…
はじめてのダーク・ファンタジー メルニボネの皇子 作者:マイクル ムアコック 早川書房 Amazon フロム・ソフトウェアのエルデンリングが大人気なわけだが、ああいうダークな雰囲気のヒロイック・ファンタジーを見ると『エルリック・サーガ』を思い出す。 中…
好きにならずにはいられない、『ダークナイトライジング』 ※この記事は全部ネタバレです。 バットマンの新作が公開されているわけだが、まだ見れてないので今回は私の好きなバットマン映画を紹介しよう。 傑作かどうかと言われるとよくわからないものの、妙…
生命哲学としてのドゥルーズ 10年ほど前、震災とそれに続く原発事故を遠くから経験した頃に、私はドゥルーズの哲学に出会った。ドゥルーズの哲学には、その時の私が必要としていたもの、すなわち生物・生命体である自分や家族がこの不確かな世界で生きていく…
一般的な枠組に分類できない種類の人間関係を書く 最新作『ヒカリ文集』が発売されたばかりの松浦理英子だが、ここではその前の作品である『最愛の子ども』(文春文庫)を紹介しよう。2017年に発表され、泉鏡花文学賞を受賞した作品だ。2020年に文庫化されて…
激動の世の中であっても面白そうな本の刊行は待ってはくれないのであった。人々は積み上げられた過去を受け止めて、その巨大な蓄積の中からひねり出したものを自分の言葉として書き続けるのであった。われわれは実体/非実体の書店に並ぶ実体/非実体のそれ…