もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ガヤトリ・C・スピヴァク『ナショナリズムと想像力』コンパクトな講演録でスピヴァクに入門

ガヤトリ・C・スピヴァクを読んでみたいなと思ったので、とりあえず一番薄そうな『ナショナリズムと想像力』を買ってみた。ブルガリアのソフィア大学における講義が2010年に書籍化したものだ。巻末には聴衆との質疑応答も収録されている。 ナショナリズムと…

最初にハマった小説がギブスン『ニューロマンサー』だった人間の末路

卵から孵って最初に見たのが『ニューロマンサー』 ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF) 作者:ウィリアム ギブスン 早川書房 Amazon 私はウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』が大好きというか、現在に至るまでに読んでいるSF、あるいは文学、あるいは…

中島隆博『中国哲学史』 誠実でダイナミックな中国哲学入門

「中国」、「哲学」、そして「歴史」とは何か、から始まる「中国哲学史」 中国哲学史 諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで (中公新書) 作者:中島隆博 中央公論新社 Amazon 2月に刊行された新書『中国哲学史』は、中国哲学に関してすでに多くの著書がある中…

雑談:漫画を途中から読むのが苦手という話(そしてMCU)

大人になって失われた能力 今回は、私が失ってしまった能力について書きたいと思う。「漫画を途中から読む能力」である。 かつて、私が子供だった頃、あるいは漫画雑誌を買っていた頃、漫画を途中から読むことは普通だった。 雑誌に載っている漫画や、たまた…

『逆行の夏──ジョン・ヴァーリイ傑作選』で読む、ヴァーリイの煌びやかで繊細なSF

ジョン・ヴァーリイの短編「逆行の夏」を紹介します。 ジョン・ヴァーリイは70年代末から活動しているアメリカのSF作家で、私のとても好きな作家の一人だ。SFファン向けの説明をすると、だいたいニューウェーブとサイバーパンクの中間くらいの作風だと思う。…

多木浩二『肖像写真』 ナダール、ザンダー、アヴェドンから読み解く、歴史の無意識

三人の肖像写真家 今回は、以前当ブログで『ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読』を紹介した多木浩二の本をもう一冊紹介しよう。 pikabia.hatenablog.com 今回取り上げる『肖像写真』(岩波新書)は、美術、写真、映画、建築など多彩な分野の批評を残…

奈落の新刊チェック 2022年5月 海外文学・現代思想・歴史・くるまの娘・リャマサーレス・吸血鬼・黒人神学・フェミニズム・ネオレアリズモほか

5月も終わり、6月が始まりましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。梅雨は読書にぴったりなわけですが、だからといってこんなにたくさん面白そうな本が出ても困るわけです。読めるわけがない。でも仮に読めなくても買っておいた方がいいです。本はとりあえず…