もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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SFファンは「かぐやSFコンテスト」とオンラインSF誌「Kaguya Planet」に注目を!(あと自作宣伝)

私事で恐縮ですが……

今回はいきなり私事で恐縮なのですが、尾崎滋流名義で「第3回かぐやSFコンテスト(テーマ:未来のスポーツ)」に応募した掌編が、選外佳作に選ばれました!

『夏の夕暮れ、タナトスの子供たち』というタイトルで、5分くらいで読めますのでぜひ読んでみてくださいませ。

近未来のパリを舞台にしたSFスポーツ小説で、テーマは「スポーツ、欲望、資本主義」です。

 

またこちらが、ちょうど大賞作が発表されたばかり「第3回かぐやSFコンテスト」の公式サイトで、ここからもリンクを貼っていただいております。最終候補に残った10作のほか、拙作のようにネット上で読める選外佳作の作品へのリンクもあります。

大賞を受賞した作品は暴力と破滅の運び手による『マジック・ボール』でした! どこかの時代(伏せてます)のアメリカを舞台したフェミニズムSFで、ラストが鮮やかに決まる快作です。

virtualgorillaplus.com

 

さて、私事の報告だけで終わっては書評ブログとして申し訳ありませんので、今回はこの「かぐやSFコンテスト」およびその運営母体である「VG+(バゴブラ)」「Kaguya Planet」の紹介記事という体でブログ記事にしようと思います。

 

 

 

 

「VG+(バゴブラ)」と「Kaguya Planet」

 

「かぐやSFコンテスト」は、SFウェブメディア「VG+(バゴブラ)」およびオンラインSF誌「Kaguya Planet」が主催するSF公募コンテストです。

VG+は2018年に開設されたウェブメディアで、SFに関する映画、ドラマ、アニメ、漫画などのレビューや批評、インタビューの掲載など、多彩な記事を発信しています。

virtualgorillaplus.com

 

それらVG+の活動の中のひとつが、オンラインSF誌「Kaguya Planet」。ネットメディアの特性を活かしつつ、「新しいSFが生まれる場所」を目指して運営されています。

virtualgorillaplus.com

 

上記サイトでも強調されていますが、Kaguya Planetは現在の日本SFの状況に対する問題意識を明確に打ち出しています。その問題意識はジェンダーバランス」「新人賞中心の仕組み」「海外との隔たり」の3点に集約され、その状況の是正を意識した取り組みが行われています。

そして、そのような取り組みのひとつが「かぐやSFコンテスト」というわけです。

 

意欲的なコンテスト「かぐやSFコンテスト」

 

かぐやSFコンテストは現在まで計3回開催されており、現在は以下のような形式で実施されています(途中から導入された要素もあります)。

  • 字数は2000~4000字
  • 大賞作品は英語・中国語に翻訳
  • 最終候補作を公開し、作者名を伏せた状態での読者投票も実施
  • 各審査員が選ぶ選外佳作も発表
     

このような開催概要そのものが、Kaguya PlanetそしてかぐやSFコンテストのコンセプトや願いをよく表現していることがわかると思います。

4000字以内という非常に短い作品に発表の場を設けること、作者名を伏せ、知名度や拡散力に影響されない読者投票を行うこと、大賞作品を翻訳し、世界のSFと同時進行で流通させること、そしてコンテストを通して、できるだけ多くの作品を紹介すること。

これらのコンセプトの全てが、前述したKaguya Planetの問題意識と通底しているわけです。

 

SF小説を書く人・読む人にとって風通しの良い環境を作り、多くの作品を紹介し、ゆるやかでありながら創造的なコミュニティを作ること。

そのような方向性を明確に表現しながら活発な活動を行うKaguya Planetに、SFファンの皆様はぜひ注目していただきたいと思います。

 

 

なおKaguya Planetはオンライン活動だけでなく、Kaguya Books」のレーベル名で書籍の出版も行っております。こちらもぜひチェックしてください。

books.kaguya-sf.com

 

また2023年6月のプライド月間には、世界各国のクィアSF短編を集めた『結晶するプリズム 翻訳クィアSFアンソロジーの無料公開が行われました。

現在は電子版および書籍版が各種書店で販売中です。

 

 

以上、Kaguya PlanetそしてかぐやSFコンテストの紹介をしながら自作を宣伝するという、やや姑息な記事となりましたが、何かしら皆様のお役に立つことがありましたら幸いです。

 

 

さらに宣伝

 

pikabia.hatenablog.com

こちらは別のコンテストカクヨム公式自主企画「百合小説」)に応募したSF短編の宣伝と、それに合わせてクィアSFというカテゴリーについて思うところを述べた記事です。

上述の『結晶するプリズム 翻訳クィアSFアンソロジーにも触れています。

 

kakuyomu.jp

上記の記事で紹介している、カクヨム公式自主企画「百合小説」に投稿した短編がこちら。近未来のシンガポールを舞台とした、詐欺師と令嬢のピカレスク・ロマンスSFです。テーマは「誘惑・階級・植民地」

 

kakuyomu.jp

こちらも同コンテスト(「百合小説」)の応募作で、近未来の台湾を舞台にした熱帯ゴシック・ロマンス。これぞゴシックという要素を詰め込みました。テーマは「廃墟・歴史・相互依存」

 

kakuyomu.jp

こちらは以前、Kaguya Booksより『SFアンソロジー 新月が刊行される際に行われた、果樹園をテーマとしたSF小説のコンテストに応募した作品。あまりストーリーらしいストーリーのない掌編ですが気に入っています。土地の歴史を鳴らすバンドが登場する、近未来バンド小説です。(選外となりましたが、コンテスト開催後の講評で少し触れていただき嬉しかったです)