もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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奈落の新刊チェック2024年5月 海外文学・SF・現代思想・歴史・野球SF・関心領域・フェミニスト、ゲームやってる・理性の呼び声・ドゥルーズと芸術・写真文学論・SMの思想史ほか

こんにちは。日本はそろそろ夏の気配がしてきた頃合でしょうか。相も変わらず無数の新刊から面白そうなものをピックアップしているのですが、このリストを作る効用として、あまりの量ゆえに「読みたい本を全て読めないのが悲しい」みたいな感情が雲散霧消する、というのがあります。人生が10回くらいないと無理でしょう。というわけで5月刊行の面白そうな新刊です。

 

 

SFメディア・バゴプラでおなじみ齋藤隼飛の編著による、豪華作家陣による野球SFアンソロジー。第三回かぐやSFコンテスト大賞受賞作である、暴力と破滅の運び手「マジック・ボール」も収録。編者が翻訳を手掛けた本に『ホークアイ マーベルドラマシリーズ オフィシャルガイド』がある。

 

声優、歌手、エッセイストなど多彩な顔を持ち、日本SF作家クラブ会長も務めた著者の初の小説集。近著に『SFのSは、ステキのS+』、監修を務めた本に『現代SF小説ガイドブック 可能性の文学』がある。

 

第5回ことばと新人賞を受賞したデビュー作。滝口悠生、千葉雅也が推薦。

 

なんと坂口安吾による、実際におこった事件の真相を推理して書かれた文章、裁判傍聴記を収めた文庫。

 

話題となっている映画の原作が同時に刊行。同作者の邦訳は2000年の『ナボコフ夫人を訪ねて: 現代英米文化の旅』以来となる。訳者はロバート・ゴダード作品を多く手掛け、近訳書に『グレート・サークル』『あのこは美人』など

 

異本も多い奇書として知られる本書、最も完全版に近いとされる版の翻訳が上中下巻で順次刊行。訳者はポーランド語翻訳の第一人者と言われ、近訳書に『帝国 新版――ロシア・辺境への旅』『ハザール事典 男性版 (夢の狩人たちの物語)』『同・女性版』など、著書に『十一月: ぼくの生きた時代』などがある。

同書は別訳『サラゴサ手稿(上)』が岩波文庫からも出ている。

 

先月刊行の『決定版カフカ短編集』に続き、同じ編者による断片集が登場。

 

2007年に単行本が出ていた、トーマス・マンの兄としても知られる作家の代表作が岩波文庫入り。映画『嘆きの天使』の原作。訳者は『息: 一つの決断』『地下: ある逃亡』などベルンハルト作品を多く手掛ける。

 

オーストラリア在住の編集者・アンソロジストによる、人新世をテーマとしたSFアンソロジー。同編者のアンソロジー創られた心 AIロボットSF傑作選』も邦訳がある。

 

2021年に単行本が出た台北が舞台のミステリの続編。前作『台北プライベートアイ』の文庫版も同時発売。訳者の近訳書に『「選択的シングル」の時代 30カ国以上のデータが示す「結婚神話」の真実と「新しい生き方」』『チョプラ警部の思いがけない相続』など。

 

様々な媒体に文章を発表していたアーティスト、美術家である著者の初の著書。フェミニズムクィアの視点から多くのゲームを紹介・批評する。

 

アナキズム入門』をはじめアナキズム関連の著書を多く刊行してきた著者による、音楽・文学・映画・思想それぞれの分野から見るアナキズム実践。近著に『死なないための暴力論』『もう革命しかないもんね』、共著に『思想としてのアナキズム

 

哲学をベースに映画や文学など様々な対象を論じる著者の、これは哲学についての大著。近年邦訳が多く、『涙の果て: 知られざる女性のハリウッド・メロドラマ』『幸福の追求: ハリウッドの再婚喜劇』『眼に映る世界〈新装版〉: 映画の存在論についての考察』『道徳的完成主義: エマソン・クリプキ・ロールズ』など。訳者近著に『世界を満たす論理: フレーゲの形而上学と方法』、共著に『あらわれを哲学する―存在から政治まで―』など。

 

デリダとポール・ド=マンについて、それぞれの翻訳も手がける著者による研究書。著者近著に『ジャック・デリダ――死後の生を与える』、訳書にガシェ『脱構築の力――来日講演と論文』など。

 

スピノザ全集』各巻の編者も務める著者による大著。近著には『スピノザと十九世紀フランス』、『スピノザ『神学政治論』を読む』など。

 

科学哲学、生物学、心の哲学などの分野がクロスする哲学論集。

 

当ブログでもよく紹介している美術史・表象文化論の著者が人新世をテーマに17~20世紀の芸術を再検討。
著書リストはこちら。

こんなに出てるの!? 岡田温司著作リスト 表象文化論・芸術・イタリア現代思想 - もう本でも読むしかない

 

著名なドゥルーズ研究者による、ドゥルーズの哲学と芸術との関わりについて論じた本。これが初の邦訳となる。三名による共訳。

 

フランス文学を専門とする著者による、モディアノ、ブルトン、デュラス、ゼ―バルトなどを取り上げた、写真を契機に成立する文学の研究。近著に『目覚めたまま見る夢: 20世紀フランス文学序説』『写真と文学: 何がイメージの価値を決めるのか』、訳書にヴァレリードガ ダンス デッサン』など。

 

クッツェーベケットなどの翻訳を手掛ける著者による、ウルフ、小津、三島を題材とした哲学/批評。著者近著に『J・ M・クッツェー 世界と「私」の偶然性へ』、共編緒に『カズオ・イシグロと日本』、訳書にベケット並には勝る女たちの夢』、クッツェー世界文学論集』など。

 

20世紀イタリアの建築家アルド・ロッシの本格的な研究書。著者はこれが初の著書となる。

 

2011年に単行本が出ていたメディア論の名著が文庫化。電信の発明による社会の変化についての本。ジャーナリスト・作家の著者は他に『歴史を変えた6つの飲物 ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、茶、コーラが語る もうひとつの世界史』『謎のチェス指し人形「ターク」』の邦訳がある。訳者はメディア論・科学分野の著書・訳書が多く、近著に『VR原論 人とテクノロジーの新しいリアル』『マクルーハンはメッセージ メディアとテクノロジーの未来はどこへ向かうのか?』、近訳書に『ホールアースの革命家 スチュアート・ブランドの数奇な人生』『ネオ・サピエンス誕生』など。

 

1997年に刊行されていた事典が、手元に置きやすい文庫で復刊。著者はオックスフォード出版の辞書編纂者で、『オックスフォード 英語ことわざ・名言辞典』『ルネサンス百科事典』(共著)の邦訳あり。

 

イスラームおよびクルアーン関連の著作が多い著者による、2004年の講談社現代新書が増補版となって文庫化。近著に『リベラルなイスラーム:自分らしくある宗教講義』『クルアーン:神の言葉を誰が聞くのか』など。

 

ロシア革命直前、ニューヨークにいたトロツキーについての長大なドキュメント。著者はこれが初の邦訳となる。訳者はトロツキーマルクスのほかデヴィッド・ハーヴェイの翻訳も。訳者近著に『新自由主義と日本政治の危機』『トロツキーと戦前の日本 ミカドの国の預言者』、近訳書に光文社古典新訳文庫トロツキーロシア革命とは何か』、マルクス資本論第一部草稿 直接的生産過程の諸結果』など。

 

アメリカ政治についての著作が多い著者による、台湾政治入門が中公新書より。著者近著に『アメリカ映画の文化副読本』『大統領の条件 アメリカの見えない人種ルールとオバマの前半生』『メディアが動かすアメリカ ――民主政治とジャーナリズム』など。

 

メディア史の大家による、戦前戦中の言論統制についての定番書が増補版で登場(旧版2004年)。近著に本書と同テーマの『ある昭和軍人の記録-情報官・鈴木庫三の歩み』や、『池崎忠孝の明暗: 教養主義者の大衆政治』『負け組のメディア史 天下無敵 野依秀市伝』『メディア論の名著30』など。近訳書にはモッセ『ナショナリズムとセクシュアリティ ――市民道徳とナチズム』『大衆の国民化 ――ナチズムに至る政治シンボルと大衆文化』など。

 

韓国出身の著者による、こちらは厳しい検閲をくぐり抜けて流通していた書物の記録。著者の単著は他に『「戦後」というイデオロギー: 歴史/記憶/文化』、共著に『検閲の帝国』がある。

 

ポストトゥルース』著者の邦訳が二冊同時に登場。前者の訳者の近訳書に『動物たちが夢を見るとき: 動物意識の秘められた世界』『絶滅へむかう鳥たち: 絡まり合う生命と喪失の物語』、後者の訳者の近著に『種を語ること、定義すること』など。

 

装飾という観点からの、本格マティス批評。著者はフランス美術史が専門で、近著に『もっと知りたいマティス 生涯と作品』など。

 

狂気な倫理――「愚か」で「不可解」で「無価値」とされる生の肯定』の編者であった著者の初の単著。雑誌「奇譚クラブ」の検証を中心とした、戦後SM思想の本格研究。

 

元祖BL雑誌として知られる「JUNE」の企画・創刊者自らによるドキュメント。

 

 

ではまた来月。