もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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奈落の新刊チェック 2023年10月 海外文学・SF・現代思想・歴史・夢見る宝石・金星の蟲・肉を脱ぐ・文学的絶対・吉田健一に就て・ニューロ・闇の精神史ほか

最近は弊ブログの更新頻度も徐々にスローペースになっており、あまり投稿していないうちに、気が付いたらこの新刊チェックの時期になっていることもしばしば。そのうち新刊チェックがこのブログのメインコンテンツになるかもしれませんが、まあそれはそれで良しとしましょう。というわけで10月に刊行された気になる本を集めました。

 

 

名作と名高いスタージョンの幻想SFがちくま文庫より新訳で登場。訳者は児童文学系の仕事が多いようです。近年の訳書に『子供たちの聖書』など。

 

河出文庫から出ている、アフリカ系米SF作家オクテイヴィア・E.バトラーの同名タイトル(『キンドレッド』)のグラフィック・ノベル版。

 

ダークツーリズムをテーマとする韓国ミステリで、英国ダガー賞受賞作。訳者は韓国語書籍の翻訳を多く手掛け、近訳書に『私の彼女と女友達』『地球の果ての温室で』など。

 

2019年のブッカー賞受賞作で、作者は黒人女性として初めてのブッカー賞受賞作家となった。訳者は他にキャシー・アッカー、アーヴィン・ウェルシュ、アルフレッド・ベスタ-などを手がける。近訳書に『アフター・クロード』『Fashion Climbing ファッション・クライミング ビル・カニンガムのファッション哲学、そのすべて』など。

 

創元SF短編賞受賞作『皆勤の徒』で知られる酉島伝法の文庫オリジナルSF短編集。『ウルトラマン』『BLAME!』とのコラボ作も収録。

 

日本語で執筆する台湾出身の芥川賞作家、李琴峰の長編。今回は身体とVtuberがテーマのようです。

 

ガガガ文庫ライトノベルを発表していた著者による、ゴシックホラー・本格ミステリ悪魔崇拝の館が舞台です。

 

岩波書店のフリーマガジン『図書』に連載されていた大江の読書案内が岩波新書から。

 

没後100年を経てチューリヒの金庫から発見されたというカフカの素描160点を実物大オールカラーで収録! これは大事件。

 

現代の、それも様々なジャンルの文学研究者の視点から新たにポーを読み解く論集。辻和彦、山本智子、中山悟視による編著。

 

総勢19名による、吉田健一論集の決定版。川本直、樫原辰郎、武田将明による編著。

 

弊ブログではおなじみ表象文化論・美術史の第一人者、岡田温司の新書がまた一冊。厳格なイメージのあるキリスト教美術だが、その中にも実は現れている性的多様性に焦点を当てた美術史。

こちらの過去記事もどうぞ。

岡田温司『キリストの身体』 聖なる「身体」が導く美と政治 - もう本でも読むしかない

 

カラヴァッジョについての著書を始め美術史の仕事を多く手掛ける著者によるバロック美術入門が新書で。著者近著に聖母の美術全史 ――信仰を育んだイメージ』など。

 

ラクー=ラバルトジャン=リュック・ナンシーの共著による歴史的な哲学/文学批評がついに邦訳とのこと。柿並良佑・大久保歩・加藤健司

 

精神医学の専門出版社である誠信書房から刊行され評価の高かったラカン入門が増補改訂でちくま文庫入り。ありがたし。

 

中井久夫の翻訳による、精神医学の古典的名著が増補新版で。これまで96年、99年に出ており、今回は三版目。

 

ロンドン大学社会学者とハーバードの医者・哲学者による、生政治の観点からの脳科学の歴史。檜垣立哉監訳。

 

ヘーゲルの翻訳をはじめドイツ哲学の第一人者として知られる著者による『日本精神史』の続編が登場。前作も同時に文庫化してます。『日本精神史(上)』『日本精神史(下)

 

2020年に『バウムガルテンの美学:図像と認識の修辞学』でデビューした著者による、新書の美学入門。

 

ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』『ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』の木澤佐登志が、ロシア宇宙主義をはじめとした「宇宙」を目指す思想の系譜とたどる。

 

磯崎新の絶筆となった連載が書籍化。

 

1972年に刊行された民俗学の名著が文庫で復刊。

 

2008年に平凡社新書で出ていた本が増補新版でライブラリー入り。著者は仏教史・鎌倉時代が専門で近著に『日本仏教史入門: 釈迦の教えから新宗教まで』『最上氏三代:民のくたびれに罷り成り候』など

 

トルコ建国の英雄についての入門書が新書で。著者は『オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史』ほかトルコ共和国オスマン帝国についての著書多数。

 

19世紀から20世紀にかけて金融の世界で大きな権力を握ったロスチャイルド家の女性たちについての評伝。著者はイギリスの歴史ライター、翻訳はおなじみ古屋美登里、そして解説は佐藤亜紀という布陣。

 

戦後日本の前衛美術において大きな役割を果たしたという「自由が丘画廊」を運営した画商・実川暢宏について。著者は編集者・ライターでこれが初めての著書のようです。

 

 

ではまた来月。