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映画ファンは「コナン映画」をぜひ見てみてほしい 初心者が語る、王道娯楽スパイアクションとしての『名探偵コナン』

あなたはコナン映画を見たことがあるか?

www.conan-movie.jp

新作映画『ハロウィンの花嫁』が公開する名探偵コナンなわけだが、これを読んでいるみなさんは、最近のコナン映画を見たことがあるだろうか?

もし見たことがない場合は、配信でもなんでもいいのでぜひ一本見てみてほしい。おそらく予想外のものが見られるはずだからだ。

かくいう私も、コナンは基本的な設定やあらすじは知っていたものの、序盤を読んだり見たりしたことがあるだけで、最近どんな感じになってるのかは全く知らなかった。

そしてある時、特に予備知識もなく近年の劇場版である紺青の拳(フィスト)を見て、あまりの衝撃に打ち震えたのである。めちゃめちゃ面白いのだ。

 

私の中で名探偵コナンといえば、高校生から小学生の姿になった探偵のコナン君が、仲間と一緒に面白おかしく事件を解決したり、たまにちょっとシリアスな展開になったりするくらいの印象だった。しかし初めて見た近年のコナン映画はそのようなものではなく、いや基本的にはそのようなものなのだが、その規模と豪華さと作り込み、そして圧倒的なエンターテイメント精神は全く想像以上のものだったのだ。

コナン映画を見て、私はほとんど、現代日本から失われていたかに見えた王道娯楽映画はここにあったのかとすら考えてしまった。

 

王道娯楽映画・スパイアクションとしてのコナン映画

 

ではコナン映画とは一体どんな内容なのか。

まず映画の舞台となる街が紹介される。それは東京だったりどこかの観光地だったりあるいは外国だったりする。時にはそれは大きな建造物の場合もある。

そしてその場所で事件が起こり、やがてそれは国際犯罪へ発展する。(この辺作りが凝っており、登場する外国人はちゃんと外国語でしゃべる)

そしてなんだかんだで国際犯罪に巻き込まれたコナンたちは、陸海空を股にかけた激しいアクションに身を投じながらその解決を目指し、そして最後にはだいたい巨大な建物か乗り物が爆発して大音響とともに事件が解決、街と子供たちの間に平和が戻るのである。

 

さて、この「観光地」「国際犯罪」「派手で大規模なアクション」という要素の揃い方であるが、つまりこれはスパイアクション映画なのである。名探偵コナンの劇場版は原作漫画やTV版のような推理ものではなく、どちらかというと007ミッション・インポッシブルのようなカテゴリーなのだ。

思えば日本映画に、新作が毎年公開されて大ヒットするスパイアクション映画のシリーズが今まであっただろうか。それを、いつのまにかコナン映画が実現していたのだ。(もし他にあったらすみません)

 

娯楽映画としての完成度

 

網羅的に見たわけではないので近年のものに限った印象だが、コナン映画は脚本も非常に良くできており、非現実的な設定や出来事をたくみに推理アクションに仕立て上げている。

ハイテクを駆使した国際犯罪アクションを描きながら、小学生探偵団もしっかり活躍し、シリーズのお約束もばっちり踏襲する。

いい意味で安心して見られるが、クライマックスでは目を疑うような出来事が連続する。私は紺青の拳(フィスト)の終盤では3分に1回は「そんなバカなことが!?」と心の中で叫んでいた(爆笑含む)。

 

そして王道娯楽映画としての極めつけの要素は、毎回のラストに挿し込まれる「次回予告」である。コナン映画では、大団円に続くエンディングテーマが終わった後に、来年のコナン映画の予告が流れるのだ! この、まさにプログラムピクチャーの時代を思わせる次回予告を見ると、「ああ、私は今娯楽映画を見ている……来年も見よう……」というしみじみとした感慨に浸ることができるのである。

このように、現代日本では得がたい体験をもたらしてくれるコナン映画を、映画館でも配信でもいいのでぜひ見てみてください。

 

 

※王道娯楽映画だけあって全く予備知識なしでも楽しめるコナン映画だが、最低限、以下の要素は認識しておくといざという時に戸惑わなくて済むだろう。

  • コナン君は解毒剤を飲むと高校生の姿(新一)に戻れる
  • コナン君のスケボーはエンジン付きで車よりも速く走る
  • コナン君のサッカーボールは巨大化し、ロケット付きのスニーカーで蹴ると破壊力がすごい
  • 蘭ねえちゃんは空手の達人ですごく強い
  • 蘭の友達の園子は財閥令嬢で実家の財力がすごい

 

近作紹介

私が初めて見てハマったのがこちら。舞台を日本からシンガポールに移し、貴重な宝石をめぐって警察と国際犯罪組織と怪盗キッド(怪盗です)がしのぎを削る。そして同時に行われる空手大会では、空手の達人・京極真(空手の達人です)が世界一に挑もうとしていた。複雑に錯綜する諸要素がマリーナ・ベイ・サンズを舞台に一つとなり、怒涛のカタストロフに雪崩れ込むクライマックスは圧巻の一言。

 

こちらは2021公開作。全世界から選手が集まる国際的スポーツイベントが東京で開催。その開会式に合わせて最新型リニアモーターカーが名古屋から東京に向かって出発するが、その周辺でいくつもの事件が勃発する。FBI捜査官で狙撃の達人・赤井秀一(狙撃がうまい)とその家族がコナンらと協力して活躍する。暴走したリニアモーターカーが開会式に突っ込む危機をコナン君は回避できるのか!?

 

公安警察かつ私立探偵かつ悪の組織への潜入工作員という盛りすぎ設定で人気のキャラクター・安室透(またの名を降谷零/バーボン/ゼロ)(設定が多い)をメインに据えたヒット作。コナンが世話になっている探偵の毛利小五郎がテロの犯人容疑で逮捕される。コナンは公安警察の安室透と時に対立、時に協力しながら、東京湾で行われるサミットをめぐる陰謀に立ち向かう。安室透が表現する「公安」の姿に戦慄しつつ、キャラクターの魅力を最大化することに全振りした華麗なアニメーションに眩惑される、ある意味怪作である。この映画のヒットにより安室透は100億の男と呼ばれた。(実際の興行成績は91億らしい)

 

原作コミック

 

映画を見て原作コミックに興味を持っても、すでに100冊を超える単行本を読むのはかなりハードルが高い。しかしそこは小学館もわかっていて、各キャラやテーマ別に分かれた編集版が多数刊行されている。気になるキャラの話から読んでみよう。