もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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奈落の新刊チェック 2024年7月 海外文学・SF・現代思想・哲学・歴史・ベル・ジャー・歌う船・他なる映画と・バトラー入門・アナキズムと哲学・すき間の哲学・サンスクリット入門ほか

いよいよ夏本番となりましたが、みなさま日傘は利用されておりますでしょうか。あるとないとでは大違いですのでぜひご利用くださいませ。そして世界と人生の苛酷な日差しから身を守るためにはやっぱり読書ですよね。(無理矢理)

というわけで7月刊行の面白そうな新刊です。

 

1974年、2004年と邦訳が出ていたシルヴィア・プラスの自伝的小説が新訳で登場。近刊に『シルヴィア・プラス詩集』『メアリ・ヴェントゥーラと第九王国 シルヴィア・プラス短篇集』などあり。訳者は他に『私たちのセクシュアル・ウェルネス 女性の体・性・快楽のメカニズム』『覚醒せよ、セイレーン』『クイーンズ・ギャンビット(新潮文庫)』など手掛けける。次に紹介する本も同じ訳者による。

 

ルー・リードの師匠的作家として知られるシュワルツの作品が初の邦訳。リード自身が序文を寄せている。訳者は上記『ベル・ジャー』と同じ小澤身和子。

 

『パーンの竜騎士』シリーズで知られる作家の古典的名作が新訳・完全版で復刊。訳者はベテランSF翻訳者で近訳書にピーター・ワッツ『6600万年の革命 (創元SF文庫)』『巨星 ピーター・ワッツ傑作選 (創元SF文庫)』など。

 

ガーナ出身作家によるハイ・ファンタジーのシリーズが刊行開始。訳者はファンタジーヤングアダルトの翻訳を多く手掛け、近訳書に『はなしをきいて: 決戦のスピーチコンテスト』『黒馬物語 (光文社古典新訳文庫 K-Aシ 13-1)』『お城の人々』など。共編著に『翻訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK』。

 

川端康成賞受賞短編「私の批評」を含む短編集。近刊に『生きる演技』『恋の幽霊』など。

 

濱口竜介による映画論が二分冊にまとまって登場。

 

2022年に高いした哲学者/科学人類学者ラトゥールの、対談をもとにした入門書。訳者は同著者の『パストゥールあるいは微生物の戦争と平和、ならびに「非還元」』『近代の〈物神事実〉崇拝について ―ならびに「聖像衝突」』も手がける。

 

ついに出たジュディス・バトラーの入門書。著者はフェミニズムクィア理論、トランスジェンダー研究が専門で、ほかに『ジュディス・バトラー 生と哲学を賭けた闘い』『ノット・ライク・ディス トランスジェンダーと身体の哲学』『身体を引き受ける:トランスジェンダーと物質性のレトリック』『〈トラブル〉としてのフェミニズム──「とり乱させない抑圧」に抗して』などがある。

 

ゲイ解放戦線に深く関わった著者による2016年の著書。他に『われら勝ち得し世界―セクシュアリティの歴史と親密性の倫理』の邦訳がある。訳者近著に『セクシュアリティの歴史社会学 新装版』、共著に『猫社会学、はじめます ――どうして猫は私たちにとって特別な存在となったのか?』『社会の解読力<歴史編>ー現在せざるものへの経路』など。

 

パレスチナ問題研究の大家サラ・ロイによる概説書。岡真理、小田切拓、早尾貴紀編訳。他に『ホロコーストからガザへ: パレスチナの政治経済学』の邦訳がこの3月に復刊されている。

 

アラブ、ポーランド、ドイツを専門とする三人の著者によるパレスチナ問題の入門書。

 

ソローキンの翻訳で知られる著者による、「危険な」ロシア文学入門。他の著書に『ナショナルな欲望のゆくえ: ソ連後のロシア文学を読み解く』がある。近訳書はマムレーエフ『穴持たずども (ロシア語文学のミノタウロスたち)』、ザミャーチンわれら (光文社古典新訳文庫)』、ソローキン『吹雪』『親衛隊士の日 (河出文庫)』『マリーナの三十番目の恋』など。

 

2021年の『感覚のエデン (岡崎乾二郎批評選集 vol.1)』に続く、美術家・美術批評家である著者の美術批評集第二弾。

 

すでに邦訳も多い現代思想の旗手マラブーの2023年の著書が早くも到着。邦訳された近刊に『抹消された快楽: クリトリスと思考』『真ん中の部屋 ー ヘーゲルから脳科学まで』『偶発事の存在論: 破壊的可塑性についての試論』など。訳者には『「誰でもよいあなた」へ 投壜通信』『ジャン=リュック・ナンシーと不定の二人称』などの著書のほか、『ジャック・デリダ──その哲学と人生、出来事、ひょっとすると』ナンシー『あまりに人間的なウイルス: COVID-19の哲学』などの訳書あり。

 

バトラー『欲望の主体 ヘーゲルと二〇世紀フランスにおけるポスト・ヘーゲル主義』などの訳者によるヘーゲル入門。共編著に『生命と自然: ヘーゲル哲学における生命概念の諸相』。

 

心の哲学現象学などを専門としつつ一般書も多く書いている著者による、なんとアフリカ哲学入門。著者近著に『間合い: 生態学的現象学の探究 (知の生態学の冒険 J・J・ギブソンの継承 2)』『問う方法・考える方法 ――「探究型の学習」のために (ちくまプリマー新書)』『じぶんで考えじぶんで話せるこどもを育てる哲学レッスン 増補版』など。

気候変動や資本主義の加速に哲学はどのように応答するのか、というテーマの論集。近藤和敬・桧垣立哉編。

 

2013年刊行書が文庫化復刊。ベルクソンは、生前に刊行された7冊以外の著作の出版を禁じた遺言状を遺したという(実際には刊行された)。著者近著に『保田與重郎の文学』『愛読の方法 (ちくま新書)』『批評の魂』など。

 

1996年に『ヨーロッパ文化の原型』として出ていた著者の初期作が文庫で復刊。

 

古代ギリシアを専門とする著者による賄賂の歴史。近刊に『古代ギリシアの民主政 (岩波新書)』『民主主義の源流 古代アテネの実験 (講談社学術文庫 2345)』、訳書に『古代ギリシア人:自己と他者の肖像』など。

 

レヴィナス現象学を専門としつつ、近年は多彩な著作を発表している著者による、公共の福祉から取りこぼされる人々についての研究。近著に『傷の哲学、レヴィナス』『客観性の落とし穴 (ちくまプリマー新書)』『「ヤングケアラー」とは誰か 家族を“気づかう"子どもたちの孤立 (朝日選書)』など。

 

憲法の専門家による、「政治的中立性」を理由に表現の自由を制限することの問題点について述べた新書。著者近著に『基本講義 憲法 第2版』『司法審査の理論と現実、共著に『憲法問題のソリューション』『現代日本の司法 「司法制度改革」以降の人と制度』など。

 

何かと議論を呼ぶアファーマティブ・アクションについての、アメリ多文化主義の研究者による概説書。著者には他に『アメリカ多文化社会論: 「多からなる一」の系譜と現在』『未完の多文化主義 アメリカにおける人種,国家,多様性』などがある。

 

1919年のパリ講和会議において日本が主張した、人種差別撤廃提案について。著者近著に『黄禍論 百年の系譜 (講談社選書メチエ)』『人種戦争という寓話―黄禍論とアジア主義―』など。

 

それぞれの大統領についての資料を収める大統領図書館13館の紹介。著者近著に『闘う図書館 ――アメリカのライブラリアンシップ (筑摩選書 239)』がある。

 

ドイツの研究者による、ジャンヌ・ダルクを「脱神話化」する歴史書。訳者の著書に『ジャンヌ・ダルクと百年戦争: 時空をこえて語り継がれる乙女 (世界史リブレット人 032)』がある。

 

中公新書からサンスクリットの入門が登場。著者は他に『ヒンドゥー教10講 (岩波新書)』『インド哲学10講 (岩波新書)』など刊行。

 

2011年の単行本が文庫化。戦前の日本に成立していた、戦後とは異なる形の「福祉国家」の姿を明らかにした名著とのこと。

 

近年復刊が続く吉屋信子の研究書。著者の初の単著のようです。

 

ヤマザキマリが厳選した水木しげるアンソロジー。以下編者を変えて続刊のもよう。

 

 

ではまた来月。