台北での最初の数か月間、私は一人で
中山國小というのは中山小学校という意味で、東西に伸びる
とはいえ台湾に来たばかりの私には、ローカルなお店で食事をするのはハードルが高かった。慣れてしまえばたいていの店では置いてある紙にボールペンで記入して渡すだけで済むのだが、最初はそのような勝手がわからない。
台湾では英語や日本語が通じる場所も多いが、あまり外国人が来ないゾーンではそんなに通じない。私は周辺をうろうろして、メニューがわかりやすく書いてある店を探した。
ここで頼もしかったのはチェーン店だ。チェーン店には標準化されたメニューがあり、入り口に大きく表示してある。私が見つけたのは
私はそこで何度も水餃と
後に私は、餃子も麺もチェーン店ではない個人経営の小さな店の方がはるかに美味いということを知るのだが、台湾に来たばかりの私にとってはそれが初めての台湾の味だった。部屋で一人でそれらを味わいながら、台湾に来たなあと思ったものだった。
農安街にある八方雲集。
わからんことだらけの初仕事の日々をやり過ごすと休日が来る。人は異国で暮らし始める時、拠点が必要になる。私はカフェで本を読むのが趣味なので、カフェに行かなければならない。
少しうろちょろしただけでも、台北にはすごく多くのカフェがあることがわかっていた。その頃(2017年)の少し前からカフェブームだったらしい。私は民権東路まで南下し、店がたくさんありそうな西側へ向かった。
民権東路は目抜き通りで、東に少し行けば有名な寺院である
中山國小の交差点からカフェやらブティックやらちょっとした商業ビルやらを眺めながらしばらく西に歩くと、果たしてそこにそれはあった。スタバだ。
カフェは他にもたくさんあったが、私の足はスタバに向かった。なぜならスタバの注文の仕方はだいたいわかる。メニューもだいたい同じはずだ。スタバならなんとかなるはずだ。 スタバは私を裏切らなかった。そこでは価格もメニューも注文方式も全て日本と同じだった。グローバル・スタンダードの威力に打ちのめされつつ、しかしせめて覚えたての中国語でアメリカーノを注文した。
「
「Hot? or ice?」
「ホット」
スタバは英語が通じる。台湾ではスターバックスのことを当て字で
ストリートビューで見たら、そのスタバはもう無かった。