虎と言えばやっぱりボルヘス!
新年あけましておめでとうございます。寅年ですね。
虎と聞いて真っ先に思い出す文学者と言えば、虎が大好きなアルゼンチンの巨匠、ホルヘ・ルイス・ボルヘスです。膨大な知識と緻密で複雑な構成による短編作家として有名なボルヘスですが、なんか虎の話になるとすごく直球になるのがちょっと可愛いんですよ。
詩と短い散文を集めた『創造者』(鼓直訳・岩波文庫)に収録された「Dreamtigers──夢の虎」の冒頭部を引用します。
幼いころ、わたしは熱烈に虎にあこがれた。 パラナー河のホテイソウの浮洲や入りくんだアマゾン川の奥地に棲息する、斑のそれではなく、戦士でさえ象の背に築かれた城からのみ立ち向かうことのできる、縞模様の、アジア産の 、王者のごとき虎にである。 わたしは、動物園の檻の前にいつまでも立っていたものだ。 大部の百科事典や博物学の書物も、挿画の虎の出来の良し悪しで評価した。(「Dreamtigers──夢の虎」ボルヘス『創造者』(鼓直訳・岩波文庫)所収)
どうでしょう、この愛の深さ。この詩は文庫で2ページ分だけの短いものですが、この後さらに虎への愛が美しく語られております。私が一番好きなボルヘスの文章かもしれません。ぜひ読んでみてください。
ボルヘスの虎愛は半端ないので、虎の詩は他にもあります。思潮社の海外詩文庫から出ている『ボルヘス詩集』には、「群虎黄金」という詩が収録されており、こちらもとても良いです。
またこちらの写真つき詩文集『アトラス』には、晩年のボルヘスがついに虎と対面した時の写真が収められており、必見です。この本は、晩年のパートナーであるマリア・コダマが撮影したスナップ写真にボルヘスの短文を添えた、ボルヘス流の旅行記のような本です。
それでは今年もよろしくお願いいたします。
※追記
ボルヘスの小説ガイドを作成しましたので、ぜひご覧ください!