もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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奈落の新刊チェック 2022年3月 海外文学・日本文学・現代思想・マラルメ・晩年の仕事・神話学・不良少女・ファッションスタディーズほか

いよいよ春ですが、新年度も読みたい本が多くて気の休まる暇もありはしないわけです。でも本は読めなくても、とりあえず買って積んでおくと、潜在的には読んでいる状態になると言えます。言えますよ。電子で積んでおくという手もあります。最高なのは紙と電子の両方を積むことでしょう。では今月もどんどん積んでいきましょう。

 

 

マラルメの代表作『賽の一振りは断じて偶然を廃することはないだろう』が新訳で登場。訳者の柏倉康夫は日本文学も含めた文学研究が専門で、同じ月曜社マラルメ『詩集』も翻訳してます。とりあえず手元に置いておきたくなる。

 

 

近年になって「再発見」された女性作家の、日本でも海外小説としてはかなりのベストセラーとなった短編集が文庫化。

 

 

アメリカの作家ダイアン・クックの2015年のデビュー短編集が白水社エクス・リブリスより。作者の2020年の小説『New Wilderness』はブッカー賞にノミネートされたそうです。ミランダ・ジュライも絶賛。

 

 

文庫がどんどん出ている佐藤亜紀の新刊が到着。今回の舞台はフランス革命前夜のベルギー。

 

 

こちらは本屋大賞にもノミネートされた、終戦直後のドイツを舞台とした歴史ミステリの文庫化。海外を舞台にした歴史小説本屋大賞の候補になるのは珍しいです。

 

 

さらに海外を舞台にした歴史SF小説。大戦中のドイツに不死の伯爵が登場。

 

 

大江みずからが「晩年の仕事(レイト・ワーク)」と呼ぶ、2000年の『取り替え子』以降の作品を読み解く評論。著者はフランス語翻訳と文学論で多くの著書のある工藤庸子。この時期の大江は自分がリアルタイムで読んでいたので気になります。

 

 

千葉雅也による現代思想の入門が満を持して登場。これを待っていた人も多いはず。デリダフーコードゥルーズからメイヤスーまで。

 

 

1985年に発表されたアガンベンのエッセイ集。33のテーマについて語っているそうだが、並んでいるテーマを見るだけでも盛り上がります。

 

 

こちらはドゥルーズフーコーラカン、バルトなどフランス現代思想の代表選手たちからアガンベンまでを取り上げ、その概念を抽出して語った本の模様。

 

 

ドゥルーズとの共同作業でおなじみ、だけど日本ではドゥルーズに比べてだいぶ知名度が低いガタリの最新論集。ガタリも知らなければ。

 

 

堀之内出版から2018年に出ていた『ハンス・ヨナスを読む』の解題文庫化。生命倫理・技術の哲学で知られるヨナスだが、文庫で読める入門書はたぶん初めて。著者はドイツ思想・技術の哲学が専門。

 

 

上記『ハンス・ヨナスの哲学』著者の単行本も同月発売。ハイデガーアーレントなどを引きながら、スマホやスマートウォッチなどのスマートデバイスに対する倫理的な検討を加える本らしい。面白そう。

 

 

批評理論への入門にぴったりなフィルムアート社の「クリティカル・ワード」シリーズにファッション編が登場。24のキーワードと11ジャンルのブックガイドを収録。

 

 

フーコー研究でおなじみの著者の新書。ホモ・エコノミクス(経済人)つまり「利己的人間」という、経済において理想とされる人間像はいかにして生まれたのかという研究。

 

 

反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる』の著者ジョセフ・ヒースの2014年の著書が文庫化。世界を「正気に戻す」ために啓蒙思想の再起動が必要、という話は沁みる。

 

 

2001年に同社から上下巻で出ていたものの新装版。独ソ戦の重厚なドキュメント。

 

 

「権力のイメージの変遷をたどる」と副題にもある通り、古今の皇帝のイメージから読み解く権力の表象分析。著者はケンブリッジの古典学教授で、「イギリス一有名な古典学者」と呼ばれているらしい。『SPQR ローマ帝国史I――共和政の時代』『舌を抜かれる女たち』など、近年邦訳が続いている。

 

 

晶文社からの神話研究の新シリーズ「神話叢書」第一弾。「性愛」と「暴力」をキーワードに世界各国の神話を網羅して読み解く。著者は宗教学を中心にいろいろな本を書いている。

 

 

ギリシア哲学について多くの著書のある著者による、和辻哲郎による建築論に着目した研究がちくま新書より。

 

 

ねじ曲げられた桜: 美意識と軍国主義 <a href=*1 (岩波現代文庫 学術 445)" title="ねじ曲げられた桜: 美意識と軍国主義 *2 (岩波現代文庫 学術 445)" />

 

ねじ曲げられた桜: 美意識と軍国主義 <a href=*4 (岩波現代文庫 学術 446)" title="ねじ曲げられた桜: 美意識と軍国主義 *5 (岩波現代文庫 学術 446)" />

2003年の単行本を上下巻で文庫化。特攻隊員の手記の分析から、軍国主義下において「桜」のイメージがどのように利用されたかを研究する。著者は2020年にも関連テーマを扱った『人殺しの花: 政治空間における象徴的コミュニケーションの不透明性』を刊行している。

 

科学者にして名文家である寺田寅彦の随筆集が平凡社ライブラリーから登場。一家に一冊。

 

 

ナショナルジオグラフィックによる、「奇書・偽書・稀覯書」を集めた本の邦訳。見るからに奇書がたくさん載っていそう。

 

 

書評・コラム・翻訳などで活躍する山崎まどかによる、21人の女性の生き様を描いた評伝集。2011年にアスペクトから刊行された『イノセント・ガールズ』の改題文庫化。

 

 

明治から昭和初期の時代に、良妻賢母の規範に逆らって生きた「バッド・ガール」たちの姿を伝える歴史書。2009年の単行本の文庫化。

 

 

ソウルの貧困層のルポ。韓国の話ではあるが、すごく他人事ではなさそう。

 

 

新作『アネット』の公開に合わせた、インタビューも含むカラックス論集。『ホーリー・モーターズ』ってもう10年前でしたか……

 

 

ではまた来月!

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