もう本でも読むしかない

仕方ないので本でも読む。SF・文学・人文・漫画などの書評と感想

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奈落の新刊チェック2023年5月 海外文学・SF・現代思想・歴史・エレクトリック・ニジンスキー・構造人類学・州浜論・日台万華鏡・プルードンほか

暦変わって6月。最近は紙の値段が上がって書籍の価格も値上がりしてると聞きますし、ちょっと売れてもなかなか重版できないとかいう噂もちらほら。本は在庫があるうちに早めに買っておけということですね。

いつまでも あると思うな 出版社在庫

というわけで5月分の新刊チェックです。

 

デッドライン』『オーバーヒート』に続く、千葉雅也の小説第3作。今回は90年代の宇都宮が舞台。表紙は前2作と同じくウォルフガング・ティルマンスによる。

 

ベートーヴェン捏造』『ベートーヴェンの愛弟子 フェルディナント・リースの数奇なる運命』などノンフィクションの著書のあるかげはら史帆の初小説。ニジンスキーの妻であったロモラが主人公の小説だが、なんとこの人物は後に宝塚歌劇のファンになったという。

 

デビュー50年を超えて衰えを知らぬ皆川博子の最新長編は、12世紀のバルト海が舞台。

 

創元SF短編賞出身作家による1冊目の短編集。前作は『七十四秒の旋律と孤独』。

 

井上雅彦編による長寿アンソロジーの最新刊。注目の新進SF作家も多数参加してます。

 

近年再評価の進むカーソン・マッカラーズの短編集。訳者のハーン小路恭子はレベッカ・ソルニットも訳してます。

 

百科事典に紛れ込んだ虚構の項目をめぐる小説。ロンドン大学で教える作者の本はこれが初の邦訳。訳者の三辺律子はファンタジーや児童文学の訳書多数。

 

1998年に文春文庫から出ていた名作ミステリが早川より復刊。翻訳はおなじみ鴻巣友季子

 

ネオノミコン』『プロビデンス (Act1)』に続く、アラン・ムーアによるクトゥルーコミック第三弾。翻訳はもちろん特殊翻訳家こと柳下毅一郎

 

肉体と死と悪魔―ロマンティック・アゴニー』『バロックのイメージ世界―綺想主義研究』など邦訳も多数ある美術史家・批評家マリオ・プラーツの芸術探訪記。パリだけでなくイタリアの話も書いてあるようです。プラーツ邦訳の多くやヴァールブルク著作集を監修している伊藤博明がこれも監修。

 

小泉義之の初期の哲学書4冊(『弔いの哲学』『生殖の哲学』『レヴィナス』『病いの哲学』)を1冊にまとめた決定版。同じく月曜社から出ている政治論集成『災厄と性愛』『闘争と統治』と合わせて持っておきたい。

 

レヴィ=ストロースの代表作のひとつが新装版で登場。旧版は1985年。

 

ラインズ 線の文化史』『人類学とは何か』など邦訳がいろいろ出ている人類学者ティム・インゴルドがアート、建築、デザインを論じる新刊。訳者の奥野克巳は『絡まり合う生命――人間を超えた人類学』『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』など著書も多数。

 

美術批評の大家、谷川渥によるバロック的三島論。著者の近刊には『ローマの眠り――あるいはバロック的遁走』『孤独な窃視者の夢想 ー 日本近代文学のぞきからくり』、訳書にロザリンド・クラウスアヴァンギャルドのオリジナリティ ―― モダニズムの神話』『視覚的無意識』など。

 

デリダやジュネの翻訳・研究で知られる鵜飼哲の批評・時評集。著者近刊に『動物のまなざしのもとで: 種と文化の境界を問い直す』『まつろわぬ者たちの祭り―日本型祝賀資本主義批判』など。

 

2001年に平凡社から出ていた『小津安二郎と映画術』の改題文庫化。先行する7人の映画監督の影響から小津の映画術を探る。映画評論家としての著者の近刊には『原節子物語 若き日々』『志賀直哉、映画に行く エジソンから小津安二郎まで見た男』などがあり、また『西洋の書物工房』のような本も書いている。

 

クィア・シネマ」という視点から映画史を捉えなおす本格批評。著者の初の単著で、編著書には2021年の『クィア・シネマ・スタディーズ』がある。

 

「洲浜」という言葉は知らなかったが、入り組んだ浜辺のことだという。その州浜を中心とした日本の文化史とのことで興味深い。著者はこの本がデビュー作で、7月には『日本庭園をめぐる』という本も出るようです。

 

2000年に国書刊行会から出ていたものの文庫化。著者は邦訳はこの本だけだが、フランスにおける中世史の権威で、この本もホイジンガ中世の秋』に比肩すると言われているそう。

 

日台万華鏡

日台万華鏡

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時をかける台湾Y字路 ──記憶のワンダーランドへようこそ』などの著書がある、日中二か国語で執筆する台湾在住著者による、日本と台湾をめぐるエッセイ集。

 

93年生まれの著者による、現在の香港についてのドキュメント。エドワード・ケアリーからノンフィクションまで手掛ける古屋美登里訳。

 

アナキストにして革命家・ピエール=ジョゼフ・プルードンの入門書が平凡社ライブラリーから復刊。著者は『プルードン・セレクション』など自身がプルードンの翻訳者でもある阪上孝。

 

話題を呼んだマンモス書籍『東京の生活史』の沖縄版。今回も沖縄に住む100人の物語を100人が聞き書き

 

 

ではまた来月。