社会と関わるものとしての現代美術 現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル (中公新書) 作者:山本浩貴 中央公論新社 Amazon 2019年に刊行された中公新書『現代美術史』は、自身も現代美術作家であり現在は金沢美術工芸大学で教鞭をとる山本浩貴による、…
軍政が終わったばかりのチリを題材にした戯曲 死と乙女 (岩波文庫 赤N790-1) 作者:アリエル・ドルフマン 岩波書店 Amazon アルゼンチンに生まれチリで育った作家アリエル・ドルフマン(ドーフマン)の『死と乙女』は、1991年にロンドンで初演され、後にロマ…
日本はまだまだ暑いようですがいかがお過ごしでしょうか。日除けと水分補給にはくれぐれもご注意くださいますよう。そろそろ読書の秋と言いたいところですがどうなんでしょうね。気になる本は秋を待たずに買ってしまうなり図書館にリクエストなりするのがい…
著者の代表作『イメージ、それでもなお』に連なる論文集 現代フランスの、哲学的な美術史家とでも呼ぶべきジョルジュ・ディディ=ユベルマンの代表的な書物に『イメージ、それでもなお』があるが、その内容に関連した3篇の文章を集めた日本独自の論集が、今…
中国の現代文学を代表する作家 張愛玲(ちょう・あいりん/アイリーン・チャン)は、魯迅と並んで中国の現代文学を代表すると言われる作家だ。1920年に上海で生まれ、1944年に初の著書『伝奇』を刊行するやいなや大ベストセラーとなったという。後年アメリカ…
竹書房文庫のSFがやばい! SF専門の文庫レーベルと言えばハヤカワ文庫SFと創元SF文庫が二大巨頭ではありますが(あと河出とかちくまとか他の文庫レーベルからも面白いSFはたくさん出てますが)、近年は竹書房文庫のSFがどんどん存在感を増しており、気になっ…
生々しい手触りを目指す、庵野秀明のヌーヴェル・ヴァーグ映画 シン・仮面ライダー 池松壮亮 Amazon 庵野秀明監督『シン・仮面ライダー』がようやく海外でも公開されたので、遅ればせながら劇場で見ることができた。(すでにAmazonプライムビデオで配信が始…
キリストの「身体」を読み解く表象文化論 キリストの身体―血と肉と愛の傷 (中公新書) 作者:岡田 温司 中央公論新社 Amazon 岡田温司についてはこのブログでも何度か紹介しているので重複になるかもしれないが、この著者には大きく分けて二種類の著作群がある…
さて異常な暑さに襲われたりTwitterがXに変わったり雑誌インタビューから結婚の文字が消えたりと末法感ただよう今日この頃ですがいかがお過ごしでしょうか。くれぐれも熱中症には気をつけつつ、気を取り直して恒例の新刊チェックといきましょう。もう本でも…
私はホワイルアウェイの農場で生まれた。五歳のとき、(みなと同じように)南大陸の学校にやられたが、ちょうど十二になったばかりの頃にまた家族の一員になった。母の名はエヴァ、もう一人の母親はアリシアといった。私はジャネット・イヴェイソン。十三歳…
ラジオ「アトロク」発のドラクエ・FF史 国産RPGクロニクル ゲームはどう物語を描いてきたのか 作者:渡辺範明 イースト・プレス Amazon 渡辺範明『国産RPGクロニクル』は、ラジオ番組「ライムスター宇多丸のアフター6ジャンクション」における、著者自身によ…
再評価の進む監督による、植民地小説の映画化 オルメイヤーの阿房宮(字幕版) スタニスラス・メラール Amazon 先日、ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』を紹介する記事(こちら)を書いている際、コンラッドの最初の小説である『オルメイヤーの阿房宮』が2010…
2023年も半分が終わり、世の中が変わったり変わらなかったり、ツイッターが制限されたりメタがツイッターを作ったりと忙しいですが、めげずに新刊をチェックしていきましょう。最後に身を助けるのは紙の本。というわけで6月分の新刊です。 覚醒せよ、セイレ…
『水星の魔女』の結末と、第1話で示されていたもの g-witch.net (ネタバレがあります) アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が最終回を迎え、2シーズン計24話の放送を終えた。 おそらくアニメとしては成功の部類なのだと思う。最後まで各種SNSでは話題に…
船乗り作家による、時代を超えた小説 闇の奥(新潮文庫) 作者:ジョゼフ・コンラッド 新潮社 Amazon ジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』は1899年にイギリスで発表された小説で、近代文学の名作と名高く、またポストモダン文学の先駆とも言われる、時代を越え…
突然ですが…… 突然ですが創作SF小説を書いて投稿サイト「カクヨム」に投稿しました。少し前からSF小説を書いていたのですが、今回カクヨム公式企画である「カクヨム公式自主企画「百合小説」」に参加するべくユーザー登録したという次第です。 近未来のシン…
表象(representation)の学問 「表象文化論」という学問のジャンルを聞いたことがあるでしょうか。まだあまり世間的に定着している言葉ではないのですが、文学や芸術、イメージについての研究を始めとして、それに関わるものとしての歴史、社会、そして哲学…
初期に発表された連作短編集 寡黙な死骸 みだらな弔い (中公文庫) 作者:小川 洋子 中央公論新社 Amazon ずっと気になってはいるものの読んだことのない作家、というのは無数にいるわけで、私にとってそのような作家のひとりが小川洋子であったのだが、このた…
『デビルマン』原作への忠実さと現代的アレンジを両立したNETFLIXアニメ (中盤くらいまでのネタバレがあります) 湯浅政明監督・サイエンスSARU制作によるアニメ『デビルマン クライベイビー』は、2018年に配信されたネットフリックスオリジナル作品だ。 de…
暦変わって6月。最近は紙の値段が上がって書籍の価格も値上がりしてると聞きますし、ちょっと売れてもなかなか重版できないとかいう噂もちらほら。本は在庫があるうちに早めに買っておけということですね。 いつまでも あると思うな 出版社在庫 というわけで…
モンスターを喰らうことによる、肉体の存在感 ※ネタバレあります 今でも残念に思っているのだが、九井諒子『ダンジョン飯』の第一話を読んだ時、私はその魅力、あるいは恐ろしさに気が付かなかった。「ああ、なんかファンタジーあるあるコメディね」というだ…
ゴシック/ゴス・カルチャーの基本図書が文庫化 高原英理による『ゴシックハート』は2004年に講談社より単行本として刊行され、2017年に立冬舎文庫として文庫化、そして2022年にちくま文庫として二度目の文庫化となった。本書は日本においてもゴシック/ゴス…
江美留には、或る連続冒険活劇映画の最初に現われる字幕が念頭を去らなかった。明るいショウインドウの前をダダイズム張りの影絵になって交錯している群衆を見る時、また夏の夜風に胸先のネクタイが頬を打つ終電車の釣革の下で、そのアートタイトルは――襟元…
「未来派」についての数少ない入門書 「未来派」をご存知だろうか。20世紀初頭のイタリアで起こった前衛芸術で、急速に発達する工業化・都市化・機械化を反映した総合的(詩・絵画・彫刻・建築・音楽含む)な芸術運動だ。後続するダダやシュルレアリスム、ロ…
迷宮の作家・ボルヘスの代表的短編集からのお勧め短編5選 さてボルヘスです。前回、「ボルヘスの小説を読んでみたい場合、どの本を買えばいいのか?」というガイド記事を作成したところ、多くの方に読んでいただいております。どうもありがとうございます。 …
4月も早々と終わりまして世はゴールデンウィークに突入。連休の方もそうでない方もいらっしゃるでしょうが、連休の方はもう、本でも読むしかないですよね。本はコスパもタイパも良く、自分を成長させてくれ、新たな発見があり、伝統的かつ権威的で、また時に…
阿部和重の初期代表作 無情の世界 ニッポニアニッポン 阿部和重初期代表作2 (講談社文庫) 作者:阿部 和重 講談社 Amazon 阿部和重は私のとても好きな作家の一人なのだが、なかなか紹介するのが難しい作家である。 なぜかと言うと、小説の中に、本当にろくな…
「資本主義の終わりより、世界の終わりを想像する方がたやすい」 資本主義リアリズム 作者:マーク フィッシャー 堀之内出版 Amazon マーク・フィッシャー『資本主義リアリズム』は、2017年に自ら命を絶った批評家・ブロガーである著者の、2009年に刊行された…
創元SF短編賞出身作家の芥川賞受賞作 首里の馬(新潮文庫) 作者:高山羽根子 新潮社 Amazon 『首里の馬』は、創元SF短編賞の佳作を受賞してデビューした高山羽根子が、2020年に第163回芥川賞を受賞した小説だ。 私はごく最近『暗闇にレンズ』『オブジェクタ…
シーズン2配信を記念して、シーズン1をざっくり紹介します youtu.be Netflixオリジナルドラマ、シャドウ・アンド・ボーンこと『暗黒と神秘の骨』のシーズン2がこの3月ついに配信された。私はこの王道ファンタジードラマのシーズン1に大変はまっていたので待…